特攻服の不良たちも血相変えて逃げた三多摩のジェイソン、警察との口激バトル…伝説の暴走族雑誌『ティーンズロード』初代編集長が語る「誌面NG秘話」
“レディース”という存在を世の中に周知させ、1980~1990年代にかけてツッパリ少女たちのバイブルとなった雑誌『ティーンズロード』。本誌のグラビアを飾っていたのは、レディース少女たちだけではない。お気に入りの車やバイクで暴走する不良少年たちにとっても、ティーンズロードから取材を受けることはこのうえない“勲章”だった。しかし当然、その現場はハプニングだらけで――。初代編集長の比嘉健二氏がレディース少女たちと接した日々を記し、第29回小学館ノンフィクション大賞も受賞した『特攻服少女と1825日』(小学館)。同著より、一部抜粋、再構成してお届けする。
『特攻服少女と1825日』#2
警察とも「対話」が成り立った時代だった
対警察とのトラブルで忘れられないこともいくつかある。『ティーンズロード』4号の取材で福島のとある地方に行き、地元のレーシングチームを撮影していた時だ。
約20台近くの派手な改造車が市内のとある高台の駐車場に集結したので、いずれパトカーが来るだろうと覚悟はしていたが、予想以上に早くサイレンが鳴り響いてきた。それも1台、2台ではない。気がつけば、6台のパトカーに取り囲まれてしまった。
これはちょっと厄介なことになりそうだと覚悟したが、その時、ど派手な真っ赤な特攻服をまとった一人が、パトカーからゾロゾロ出てきた警察官に敢然とこう大声で怒鳴った。
「市内にパトカー7台しかないのに、ここに6台も来たら、今、なんか事件あったらどうすんだ!」
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活字で書くと一触即発のように感じるかもしれないが、これが強い訛りのまじった言い方だったから、いまひとつ緊迫感にかけていた。さらにこの返しがまた傑作だった。
「それもそうだ、お前らあまり周りに迷惑かけないようにすぐに解散すんだぞ」
当然これも訛っていた。パトカーはさっさと退散してその後はゆっくり撮影できた。
何が言いたいかというと、確かに世間一般の常識ではこちらにも非があるわけだが、集まっただけで別に事件がその場で起きたわけではなければ、どこか大目に見るという寛容さがあったということだ。
何よりまだ、この頃は規則から逸脱していたとしても人間同士、対話して落とし所を見つけるという解決策が残っていたということだ。
文/比嘉健二
#1 幹部は全員大学に進学。大分の異色のレディース「烈慰羅」初代総長のゆきみは学校も暴走も”ハンパ”は許さなかった
2023/7/13
¥1,650
256ページ
ISBN:978-4093891226
辻村深月さんほか各界の著名人が絶賛
選考委員が大絶賛して受賞に至った第29回小学館ノンフィクション大賞受賞作。
◎辻村深月氏
この著者でしか語り得ない当時の日々と、登場する少女たちが非常に魅力的。無視できない熱量を感じた
◎星野博美氏
一生懸命全力で怒り、楽して生きようとは露ほども思わず、落とし前は自分でつける彼女たちのまっとうさが愛おしくなった。これぞ、生きた歴史の証。多くの読者と共有したい作品だ
◎白石和彌氏
出てくる少女たちがみんないい。編集長として立ち上げた雑誌が次第に筆者の思惑とは別に少女たちの集まる場所になっていく過程も面白かった
ほかにも、
◎ラランド・ニシダ氏
一時代の一瞬の熱狂の生き証人。比嘉さんが書き残したことでレディースの女たちが、令和の今に生き生きと蘇ってきた
◎麻布競馬場氏
正しい場所ではなかったに違いない。でもそこで少女たちがグロテスクなほどに輝いていたという事実の重さから、僕は目を背けることができない
◎瀧川鯉斗氏
“暴走族のルール”がここまで繊細に描かれていることに脱帽した
と各界からも感動の声が続出している話題の1冊です!