ジェイソンの悲劇ふたたび・・・・
バシ! バシ! ドス! 竹刀の音だ。さっきの巨体の男だ。狭いトンネル内なので、さらに音が響きわたる。まるでホラー映画の一場面だ。ジェイソンは実在した……。結局この後、無事(⁉)に撮影は終わり、自分たちに危害が加えられることはなかった。一番心配した倉科のミニクーパーも無事だった。
普段なら撮影が終わった後は、撮影場所近くのファミレスでコーヒーを飲むのがささやかな楽しみだったが、今夜ばかりは速攻で立ち去ったことは言うまでもない。
翌日彼らの一人から連絡があった。
「先輩からの言づけです、ティーンズさんに迷惑をかけたことを謝っておけとのことです」
最後までどんな顔立ちだったかさえ自分たちにはわからなかった三多摩のジェイソン。根っからの悪人ではないのだろう……そう信じたい。
今でも用事があり近辺のインターを降りると、あの夜脇目も振らず全速力で走って逃げたことが頭をよぎる。一般的に、編集者という職業で〝走って逃げる〞ことなど、そうあるものではないだろう。
ただ、こうしたトラブルは雑誌のイメージの割にはそれほど多くはない。三多摩の件も振り返ればそれほど深刻なトラブルではなかったが、暗闇の中で姿が見えない大男の恐怖が強い印象となっていたので、今でも自分の中では忘れられない出来事なのだ。
あの手の地元の先輩との行き違いによる揉め事も、思い出せばちょこちょこはあることだった。その理由の大半がやはり現役の族の連中が地元の先輩の家の近くで騒音をまき散らすということだった。つまりあらかじめ取材の承諾を先輩に取っていないとトラブルにつながるが、ほとんどは現場で解決することだった。
こういうことを何回も経験してくると、自然とトラブルに対する対処もできてくるのだ。創刊当初は取材中にパトカーが来ただけで心臓が体からハミ出るほど緊張していたものだが、それも毎回のように起きると、こちらも対応策のようなものがわかってくる。