強迫性障害、無意味と自覚しつつやめられない辛さ
――遠野さんは「強迫性障害」でもあると公表されていますよね。どのようなご病気なんですか?
遠野 いろんな種類の症状があるんですが、私の場合は「確認行為」です。例えば、IHから火が出るんじゃないかと不安になって何回も触って確認をしたり、後から確認をするための写真を何百枚も撮らないと家を出ることができなかったりとか、そういう行為です。
――その症状はいつから始まったんですか?
遠野 20代からだと思います。きっかけは、母と縁を切ってからかな。今思えば、母親も強迫性障害だったんですよね。
――今は治っているんですか?
遠野 治ってないです。お薬で治療中で、症状はだいぶ軽くはなりました。ひどいときは、家を出るときの確認作業に3時間もかかってました。泣きながら、「大丈夫、大丈夫。絶対大丈夫。絶対大丈夫」って何回も呪文みたいに言いながら確認していました。夏は汗でびちょびちょになりながら。今は10分、20分の確認行為で済んでます。
――強迫性障害の辛いところは?
遠野 無意味なことをやっている自分…ですね。
―― 自分自身に嫌悪感を持ってしまうことは……。
遠野 持っちゃいます。人に見られたりしたら、すごく嫌。だから、これも摂食障害と同じで、人に言ってしまいます。「強迫性障害という病気だから、ちょっと確認行為が多いんだ」って。言っちゃえば楽になる、自分が。
――周りに摂食障害や強迫性障害の人がいたら、どう接するのがよいでしょうか。
遠野 あまり気を遣わず、ごく普通に接してほしいですね。「無理しないでね」とか、ひと言言ってくれるぐらいがいいです。
強迫性障害のことを知らない人が見ると「何しているのかな?」って見てしまいがちですが、街中でそういう確認行動などをしている人を見かけても、素通りしてほしいです。からかわれたり、笑われちゃったりすると、打ちのめされた気持ちになります。
ただでさえ、確認行動をしている最中って、恥ずかしくてしょうがなくて、正直、殺してくれと思うくらいきつい。奇妙な行為をしているということは、自分が一番分かっているんですよ。それをからかわれるとどういう気持ちになるか、逆の立場だったらどう思うか、考えてほしいなと思います。
――摂食障害や強迫性障害で苦しんでいる方にメッセージをお願いします。
遠野 私は今も完璧に治っているわけではないですけど、明らかにお薬を服用して症状は軽くはなって楽に生活できているので、まずは病院にかかって、先生とよく話し合って、お薬で治療してほしいなと思いますね。そのお医者さまと相性が悪かったら、また違うお医者さまにかかって、相性のいい先生を探すことも大事だと思います。
また、治そうという気持ちも大切ですが、ある程度、腹を決めて共存していくことも大事だと思っています。症状と共存しながら、悲観ばかりせず、何か新しいことや楽しいこと……恋をする、旅行をする、ペットを飼うとか……視点をちょっと変えてみて、苦しいことにばかり目を向けないのも、一つの人生の楽しみ方かなと思います。
摂食障害の場合は、孤独が孤独を呼んで悪化していくというのもあると思うので、あなたは1人じゃないよ、ということをわかってほしいと思います。私も、その苦しみは、どれだけ苦しいかということを私もわかっています。私のように、症状に苦しんでいても、それでもテレビに出ようって、笑顔でいようって思う人間もいます。絶望しないでほしいです。
取材 たかまつなな/笑下村塾
監修 森隆徳(精神科医)