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高学歴の看護師のケース

松田美代子さんは、国立大学の保健医療学部看護学科卒という高学歴の看護師である。彼女は大学卒業後に、地元の市民病院に就職したが、うまく適応できなかった。

幼児期、松田さんには言葉の遅れがあり、3歳ごろまではオウム返しにしか話ができなかった。このため家族が保健所に相談に行ったこともあった。

子供のころから人付き合いは苦手で、友人は少なかった。また音に過敏なところがみられた。

小学校のときから、周囲からからかわれることが多くなった。

合わない担任の教師からは、体型のことで嫌味を言われた。廊下でクラスメートからいじられたため、大声で反撃したところ「お前の方が悪い」と自分だけ校長から怒られたこともあった。

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中学になると、さらにはっきりしたいじめの被害に遭った。周囲からは無視されることが多く、自分のしていることを横取りされたこともあった。

他のクラスメートが楽しそうにしているのをみると、理由なく怒りがわいてきた。殴りつけて殺したいとも感じたという。

そうした感情を自分なりに抑えていたが、からかってきたクラスメートをパイプ椅子で殴ったこともあった。

中学での成績は上位で、地元の進学校の高校に入学した。高校では友人はほとんどできなかったが、自分でもトラブルを起こさないように注意をしていた。

大学時代には周期的にふさぎ込むようになり、大学の保健センターに相談に通いながら、なんとか卒業することができた。

病院に就職してからも、なかなか意欲がわかなかった。自分で勉強をしたり、調べたりすることが億劫だった。

そうした中で、不注意によって、患者の転倒や誤薬、点滴の管理ミスなどのインシデントを繰り返し起こした。

このため松田さんは気持ちが落ち込み、死んでしまいたいと思うことに加えて、職場で入院中の患者に対しても死んでしまえばいいのに、と否定的な気持ちを抱くようになった。