十二社の“気”にやられた
──十二社(西新宿四丁目)を取り上げた回では赤羽との共通点を見出すなど、清野さんの街への熱量を感じました。
何度か僕も一緒に行っているのですが、最初にスナック「フレンド」に行った日に、酔い覚ましもかねて新宿駅まで歩いたんです。そしたら清野さんが駅で急に具合が悪くなっちゃって。
清野さん曰く「十二社の“気”にやられたんじゃないか」とおっしゃっていて。やっぱり行ってみて何かを感じることはあるみたいです。
結果的に十二社はその後、何度も行くくらい気に入っていました。それだけ強烈に惹かれるものがあったんだと思います。
逆に全然波長が合わない街もあるみたいで。ファンの方から「東京23区東部の某駅とかどうですか?」と提案されたことがあるのですが、「行ってみたら合わなかった」とおっしゃっていました。
──清野さんの琴線に触れる街でないといけないんですね。
どこに刺さるのか、基準は僕にもわからないのですが、漫画のネタになっているのは基本、関東です。そもそも清野さんは一度も日本を出たことがなく、海外にも関心がないそうです。国内だって四国や九州や北陸にも行ったことがないくらい行動範囲が狭い。長距離の移動がそんなに得意じゃないし、夏が大嫌いで暑いところも苦手だそうです。
『UOMO』7月号の旅特集で一緒に八戸(青森県)に取材に行きましたけど、それもいくつか候補を提案した中から「涼しそうだから」という理由で選んでいました。
──八戸は気に入ったのでしょうか?
すごく気に入っていました。僕は1泊で帰りましたが、2泊くらい延泊していましたから。清野さんはパートナーの壇蜜さんの影響で鳥が好きなので、ウミネコの繁殖地として有名な蕪島(かぶしま)に行ったら「かわいい、かわいい」と大興奮していました。
八戸はご飯もおいしいし新幹線で行けるし、ポテンシャルがめっちゃ高い。まだ外国人観光客に見つかっていない穴場だと思いましたね。
──そう考えると、『スペアタウン』で取り上げている街もまだ外国人観光客にバレていませんね。
多摩センターは、外国人観光客がこぞって行く場所じゃないですもんね(笑)。でも実際に秋の夕暮れとかに行くと景色がすごくエモいんです。
清野さんは描く街に対してすごく愛情を持っているので、知らない街でも絶対行ってみたくなるし、知っている街でもすごく新鮮に見えてくる。街を魅力的に描く才能がすごいと思います。