「四球は安打と同じ価値がある」という岡田監督の野球観

チームの中にいるのと、外から見ているのは違うので、あまり勝手なことは言えませんが、自分が選手だったころと比べると、岡田監督は、選手とのコミュニケーションの取り方なども意識して変えたのではないでしょうか。

頑固に見えて、柔軟なところもあるので、年齢の離れた選手たちにとって最善だと思う方法をとったのだと思います。

この1年間、選手たちの成長を見ていると、あらためて自分がルーキーから5年間、岡田監督のもとで、いい過ごし方をさせてもらっていたのだな、自分もこうやって野球を覚えさせてもらったのだなと感じます。

甲子園球場(写真/shutterstock)
甲子園球場(写真/shutterstock)

岡田監督はよく「普通にやればいい」と言われますが、自分が一番学んだのは、やはりグラウンドに立ち続けるということです。岡田監督のもとで戦った5年間、オープン戦からシーズンまで、ケガがなければ当たり前のようにフルイニング出場でした。そこで、グラウンドに立ち続ける意味、価値を教わったことで、自分の野球観も大きく変わりました。

今シーズンの戦いをみていると、四球というものに対する岡田監督の野球観が、選手にうまく伝わったのだと思います。

シーズンが始まる前に、四球の価値をあげるため、年俸の査定ポイントを変えたという話も聞きましたが、選手の立場からすると、実際の金銭面では、そこまで大きいものではありません。

ただ、岡田監督が「四球は安打と同じ価値がある」ということを選手に伝えたことが、非常に大きかったと思います。実際に、昨シーズンと比べて四球は圧倒的に増え、打率や本塁打数が突出した選手がいるわけではないのに、得点はリーグ1位です。

打順やポジションを固定するなど、他にもいろいろな要因はあると思いますが、最も難しいと思われる「意識を変える」ということが、選手たちが1年間かけてじっくり成長し、自信をつけるということにつながったのでしょう。チームを勝たせることが監督にとって一番の仕事なわけですから、選手の野球観を変え、チームの勝利に結びつけた岡田監督の手腕は、本当に「すばらしい」の一言です。

18年前、2005年のリーグ優勝のことを少し思い返してみました。当時はまだプロ2年目、初めてレギュラーとして試合に出続けていた自分にとって、優勝がどうとか、チームの勝ちがどうとか、そんなところまで気が回るレベルではなかったというのが正直なところです。

もちろん、うれしくないというわけではなかったのですが、目の前の自分がやるべきことに必死で、勝ち負けを考える余裕がなかったのです。そもそも、チームが強かったので、当時はその後、何度もリーグ優勝できるものだと思っていました。まさか、自分自身にとって、あれが最初で最後のリーグ優勝になるとは…。今思えば、もう少しちゃんと味わっておけばよかったと思います。

まだ、シーズンが終わったわけではないですが、1年間の集大成として最高の結果を出した選手たちには、しっかりと「アレ」の歓びをかみしめてほしいと思います。

構成/飯田隆之