自分でも知らない間に行動している

「気づいたら高層マンションの最上階の外階段に立っていて…」知らない間に自傷する人たちに共通する“幼少期のある経験”_4

毎月かなりの額を母親に仕送りしていた。そのために必死で働き、仕事をいくつも掛け持ちした。

しかし、心は正直だった。精神症状は悪化していった。不眠、不安、ときには突如、ひどい恐怖心が襲った。徐々に働けなくなっていった。働けなくなったら仕送りができないという恐怖は、ますます高まった。記憶がなくなる頻度は増した。

ふと目が覚めると、記憶から計算した日付と、目の前で朝のテレビニュースが言っている日付とが合致しなかった。職場の同僚に連絡した。

「昨日、私、ちゃんと出勤してた?」
「なにを変なこと言ってんの? 昨日、会ったじゃん。なんか具合悪そうではあったけど」

それを聞いて余計に怖くなった。自分の知らないあいだに行動しているらしかった。

医師に眠れるように薬を出してほしいと言うと、もう必要十分に処法していると言われた。それから、やはり休職するように助言された。彼女が「休職することはできない」と言うと、「じゃあ、どうしたいの!」と診察室で怒鳴られてしまった。

医師からしてみたら、これだけ状態が悪いのに頑なに休職を拒む理由と、親のことを怖がっているというのに連絡を取りあっていて無視できない様子が、理解できなかったのだろう。

彼女は病院を変えたが、今度は薬しか出してくれないようなところだった。その当時の薬手帳を見せてもらったことがあるが、かなりの処方量だった。