寝たきり老人の数世界1位
日本の寝たきり老人の数は、推定ではあるが世界ワースト1位である。また高齢者における寝たきり割合もおそらく世界ワースト1位である。
なぜ推定かというと、寝たきり老人の数を世界的に調査した近年のデータがないからである。
1989年の報告では日本の老人の寝たきり率は、施設入所者でアメリカの約5倍、在宅居住者でイギリスの約3倍、デンマークの約6倍で断トツの世界一だった(厚生科学研究特別研究事業「寝たきり老人の現状分析並びに諸外国との比較に関する研究」データより)。
近年はこの手の調査がないが、日本の寝たきり老人の数はあまり減っていないので、いまでも日本は断トツの世界一だと推定されるのだ。
日本では寝たきり老人が、300万人以上いると推計される。
2020年の介護保険事業状況報告(厚生労働省)では、施設に入所している寝たきり老人だけで、300万人以上おり、自宅等で寝たきりになっている人を含めればさらにその数は増える。
これほど寝たきり老人のいる国は、世界中どこにもない。
というより、日本以外の国では、医療機関などには「寝たきり老人」はほとんどいないとされている。日本以外の国は、自力で生活できなくなった人に過度な延命治療はしないので医療機関に寝たきりで何年も生きているというような人はほとんどいないのだ。
日本が高齢者大国だということを考慮しても、この数値は異常値と言えるだろう。
この寝たきり老人が多いことの原因こそが、日本医療制度の欠陥の原因
この寝たきり老人が多いことの原因こそが、日本医療制度の欠陥の原因とも言えるのだ。
なぜ、日本にこれほど寝たきり老人がいるのかというと、医療現場では、「とにかく生存させておくこと」が善とされ、点滴、胃ろうなどの延命治療が、スタンダードで行われているからだ。
自力で食べることができずに、胃に直接、栄養分を流し込む「胃ろう」を受けている人は、現在25万人いると推計されている。
これらの延命治療は、実は誰も幸福にしていないケースが多々ある。寝たきりで話すこともできず、意識もなく、ただ生存しているだけ、という患者も多々いるからだ。
日本の場合、親族などが望んでいなくても、一旦、延命治療を開始すると、それを止めることが法律上なかなか難しいのだ。
「自力で生きることができなくなったら、無理な延命治療はしない」ということは先進国ではスタンダードとなっている。日本がこの世界標準の方針を採り入れるだけで、医療費は大幅に削減できるはずだ。
なぜ日本がそれをしないかという一因は、この延命治療で儲かっている民間病院が多々あることだ。そういう民間病院が圧力をかけ、現状の終末医療をなかなか変更させないのだ。
「もう死ぬということがわかっているときには、安らかに死にたい」と多くの人が思っているはずだ。しかし、現在の日本の医療システムはそれを許さない。脳波があり、心臓が動いている限りは、あらゆる装置を使って一日でも長く生きさせようとするのだ。
それは、本人のためでも家族のためでもない。ただただ開業医の利益のためとさえ言ってよいと著者は思う。ここでも「開業医の横暴」が、日本の医療を歪めているのだ。