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低所得者に手厚い欧米諸国

日本の社会保障が貧困なのは、金額だけではない。その内容も、非常にお粗末である。

たとえば「自由競争の国」とされているアメリカは、貧困者への扶助に日本の10倍を費やしている。しかもアメリカの扶助は、日本のように生活保護一本やりではない。バリエーションに富んだメリハリの利いた保護を行っているのだ。

アメリカには勤労所得税額控除(EITC)と呼ばれる補助金がある。

これは収入が一定額以下になった場合、国から補助金がもらえるという制度である。

EITCとはEarned Income Tax Creditの略である。課税最低限度に達していない家庭は税金を納めるのではなく、逆に還付されるという制度で、1975年に貧困対策として始まった。

年収と子どもの人数にもよるが、年収が1万ドル程度の家庭は、2500ドル程度の補助金がもらえる。子どものいない家庭への補助は少なく、子どものいる家庭へより手厚い制度となっている。

またひとり親の家庭では、現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などを受けられる制度もある。

イギリスやフランスにも同様の制度がある。

このように、欧米では貧しく子どものいる家庭は、手厚い公的扶助が受けられる。豊かな者も貧しい者も子どもがいれば一律に受けられる。どんなに貧しくても月1万円程度しかもらえない日本の児童手当が、いかに粗末な公的扶助であるか、わかるというものだ。

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健常者などに対してはフードスタンプなど食費補助

またアメリカは子どものいない健常者(老人を除く)などに対しては、現金給付ではなく、フードスタンプなど食費補助などの支援が中心となる。現金給付をすると、勤労意欲を失ってしまうからである。

フードスタンプとは、月100ドル程度の食料品を購入できるスタンプ(金券のようなもの)が支給される制度である。スーパーやレストランなどで使用でき、酒、タバコなどの嗜好品は購入できない。1964年に貧困対策として制度化された。

このフードスタンプは、申請すれば比較的簡単に受けられる。日本の生活保護よりは、はるかにハードルが低い。

2010年3月のアメリカ農務省の発表では、4000万人がフードスタンプを受けたという。実に、国民の8人に1人がその恩恵に預かっているのである。