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40年前のインフレとなにが違うのか?

日本がインフレに見舞われたのは、2022年が初めてではない。遡ると、40年以上も前の1979~1982年に第二次石油危機が起こった。1979年のイラン革命が引き金になった原油高騰から始まったインフレである。1980年の消費者物価上昇率は7.7%まで上がる。余波は、1981・1982年にも残ってインフレ率を高止まりさせた。

しかし、現在とは様々な経済条件が大きく異なっていた。特徴的なのは、賃金上昇率と預金金利の水準が高かったことである。家計が受けるインフレの痛みは、それらの効果によって大きく緩和されていた。

それに比べて現在は、物価が上がって、賃金も上がりにくく、かつ預金金利もゼロ%近くに張り付いたまま。それがインフレ課税を生み出す。何も手立てを講じなければ、時間とともにジリ貧になっていく。これは、格差拡大にもつながる。40年前のインフレとは根本的に違うのだ。

では、なぜインフレ率に、賃金上昇率や預金金利が同調して動かない事態が生じているのだろうか。一体、その違いの背景にあるものは何なのだろうか。例えば、1990年代のバブル崩壊、それに続く金融危機なのか? いや、欧米各国は同じような金融危機を2008年のリーマンショックで経験した。しかし、欧米は「日本化」しなかった。

一つの仮説は、人口動態だ。象徴的なのは、日本人の平均年齢(中央値)が高齢化したことだ。1985年の平均年齢は32.5歳であった。最近(2020年)は48.4歳だ(国連統計)。32歳と48歳の体力は著しく違っている。それに比べて、米国の平均年齢は現在も38歳。カナダ・イギリス・フランスの41~42歳と比べても、いくらか若い。

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人口構成の格差が、経済データの背後にはあり、現在の日本経済のパフォーマンスに影を落としていることが暗示される。1985年の日本は、若くて伸び代が十分にあった。国の若さが賃金上昇や金利水準の高さにも反映している。これは、企業の従業員の平均年齢を考えれば、よくわかるだろう。

平均年齢が32歳の企業は、シニアになるまでまだ賃金水準を上げていかなくてはいけないと経営者が思う。しかし、もう48歳ならば、ベースアップの期間は終了して、経営者は従業員の給与水準を見て、もう十分に高すぎると感じる。むしろ、70歳まで働いてもらうのならば、賃上げではなくて、50歳以降は賃下げをして長くいてもらおうという発想に傾く。