地方の下水普及率は途上国以下
日本の社会インフラが遅れている分野は、まだまだ多々ある。
たとえば下水道である。現代人にとって、生活排水は下水道によって処理されるものであろう。それは日本だけではなく、世界中でそういう傾向になっている。
が、日本の地方では、下水道が通じていないところがけっこうあるのだ。
現在、日本全体の下水道の普及率は約80%である。ヨーロッパの普及率とほぼ同じ程度だ(表4)。
だから、これだけを見ると、日本の下水道普及に問題があるようには見えない。しかし、これにはカラクリがあるのだ。
日本の場合、人口の4分の1が首都圏に住むという極端な人口集中がある。首都圏や都心部には下水道が整備されているため、必然的に下水道普及率が上がっている。地方から首都圏に人口が流入すれば、何もしなくても、下水道の普及率(人口比)は上がるのである。
しかし、日本の場合、地方では下水道の普及率が、先進国の割に非常に低いのだ。50%を切っているところも珍しくない(表5)。
下水道がない地域では、各家庭が浄化水槽を準備しなくてはならないなど、余分な負担が大きい。
徳島県の下水普及率は18.7%
たとえば島根県は51.3%である。
島根県は、90年代の公共事業大濫発時代に、竹下登元首相らのおひざ元として、全国でも有数の公共事業受注地域だったが、下水道の普及工事はほとんど行っていない。
下水道の普及率で、特にひどいのは四国である。4県のうち3県が50%を切っている。
坂本龍馬のような開明的な人物を生んだ高知県だが、41.2%である。
徳島県に至っては18.7%。なんと県民のほとんどは、下水道のない生活を送っているのだ。この数値はアフリカ並みである。広大な砂漠、ジャングルを持つアフリカ大陸と徳島県は、下水道の普及率に関する限り、ほぼ同じなのである。
他にも、鹿児島、香川などが50%を切っている。
このような地方のインフラ整備の遅れが、一極集中を招いたとも言える。もちろん、下水道だけじゃなく、さまざまなインフラを含めての話である。地方の人は、インフラの整っていない地元を捨て、都会に出てくるのだ。
つまり、それで地方はどんどんさびれていくのだ。
80年代、90年代に行われた狂乱の大公共事業では、道路や箱モノばかりがつくられ、下水道の普及はそれほど進まなかったのだ。当時、ちゃんと予算を下水道に振り分けていれば、いまごろ、日本では、国の隅々まで下水道が普及していたはずだ。