「大気汚染は中国進出した外国企業のせい」

中国では、上記のように、行政トップが口を酸っぱくして環境対策を力説しても、どの地方政府も実際の行動に移すことは少なく、依然として生産優先だ。

中国の大気汚染が深刻になった大きな要因のひとつは、じつは日本が円借款を打ち切ったことにある。2006年、小泉純一郎首相が新規の円借款を2008年で打ち切る決定をしたことが、中国の環境対策に大きなダメージを与えた。

「上海では豚汁がタダで、北京ではタバコが無料」の自嘲的揶揄が意味するものとは…。過剰生産を続けてきた中国が今支払う代償_5
中国・灰江省の工場
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なぜなら、地方政府と電力会社など国営企業は、硫黄酸化物の脱硫装置や防塵など、公害防除のためのクリーン設備の費用を中央の特別枠でもらうようなのだが、その特別枠の財源が円借款だったからだ。日本の資金援助がなくなると、地方政府は環境対策のための設備投資をしなくなったというわけだ。

中国の新聞で〈大気汚染は中国進出した外国企業のせいだ。〉という記事が出ることがあるが、環境保護を自己責任とせずに、他国に頼る身勝手さの表れだろう。

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『米中通貨戦争――「ドル覇権国」が勝つのか、「モノ供給大国」が勝つのか』(育鵬社)
田村秀男
「上海では豚汁がタダで、北京ではタバコが無料」の自嘲的揶揄が意味するものとは…。過剰生産を続けてきた中国が今支払う代償_6
2023年7月30日
1,980円
304ページ
ISBN:978-4-594-09391-4
ドルを完全否定したくてもできない中国、
勝てるとわかっていても〝返り血〟が怖い米国
ロシアによるウクライナ侵略の本質は、米中の通貨代理戦争である。グローバル化された世界で基軸通貨ドルを握る米国に、ドル覇権に挑戦する、モノの供給超大国中国。その戦場のひとつがウクライナである。覇権争いはウクライナに限らず世界のあらゆる場所や分野で演じられている。
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