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バブル崩壊に揺れる砂上の楼閣

「チャイナリスク」が世界の金融市場でささやかれて久しい。チャイナリスクとは、中国特有の政治・経済・社会的要因によって、中国を対象とした投資や商取引を行う外国企業の経済活動が晒される危険のことだ。その有力な根拠に挙げられたのが、「不動産バブル崩壊説」である。

中国の不動産相場は、2013年から下降しはじめ、2014年初めから翌年末にかけて暴落、その後ふらついたが、2018年から2020年末にかけて上昇しつづけた。そして、2021年初めからは減速し、同年9月には前年比マイナスに落ち込み、2023年2月までマイナスが続いた。下図は、全国平均の住宅相場の前年同期比増減率である。 

2年前から続く中国の不動産相場急落が信憑性を与える「チャイナリスク」。リーマンショックを経験した日本はどう捉えるべきなのか_1
中国全体の住宅平均相場の前年同期比増減率(%)
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2014〜2015年当時の不動産価格の低迷は中国全土に広がっており、地方のいくつかの中小都市では高層マンション群がガラ空きで、ゴーストタウン(鬼城)化した。中国四川省に生まれて2007年末に日本に帰化した石平氏は、鋭い中国分析で知られる評論家である。日中の政治・経済・外交問題に通じ、以前から中国の不動産バブル崩壊説を唱えていた。

氏によれば、2013年12月下旬時点で中国の不動産業界の中心人物が、「不動産バブルが崩壊したスペインは中国の明日だ」などと相次いで警告したという。2012年にユーロ圏第4位の経済規模を持つスペインの不動産バブルが崩壊してヨーロッパのみならず世界を震撼させたが、今度は中国の番、というわけだ。

また、香港財閥の長江実業集団の総帥、李嘉誠は、1990年代に小平との縁で大々的に中国で不動産開発を手がけてきた人物だ。1997年の英国による香港の返還時に日経新聞香港支局長だった筆者は親しくしていたが、彼は常にリスクを考えて3年以内に中国本土での投資を回収するという原則を持っていた。それほど、中国不動産投資のリスクは大きい。