不思議な判決

ドラマの内容はかなり改変されているが、ここでは実際の事件について、もう少し書いておきたいと思う。

当時のニュース記事などを見直してみると、事件直後からすでに「少年法」について言及されていたのがわかる。Aが検察送致となった際のKBSニュースは、送致理由となった容疑を述べた後に、次のような一言を加えている。

ただし、未成年者のAには少年法が適用されるため、懲役は最高で20年となります。(2017年4月7日、KBSニュース)

ドラマにも描かれていたように、「厳罰を求める世論」は当時から相当強かった。メディアでは少年法改正問題がとりあげられ、賛否をめぐる議論が燃え上がったのだが、たしかに半年後に仁川地方裁判所が出した判決は「異様」ではあった。

主犯のAには懲役20年、共犯のBには無期懲役。

実行犯である主犯Aよりも、共犯Bのほうが刑が重いって、なぜ? しかもBは共謀の嫌疑だけで、当日の犯行には加わっていないのに? 視聴者の疑問を予測したように、ニュースではイラスト付きの解説が用意されていた。インタビューに応じた担当判事の語りは、実にあっさりしたものだった。

二人とも少年法の適用を受けますが、Aは18歳未満であるために死刑や無期懲役には処されずに懲役刑になり、Bは18歳以上であったために無期懲役となりました。
(2017年9月22日、KBSニュース)

16歳と18歳。いずれも未成年であり「少年法」の対象となるが、18歳を区切りにその処罰が大きく違っている。それが法律というものなのだろうが、主犯と共犯で逆転してしまった量刑はやはり不自然だった。そもそもBは共謀を否定しており、判決には不服ということで即刻控訴した。また数日後にはAも「犯行当時は心身微弱状態であった」として控訴している。

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翌年4月の控訴審では、「Bに犯行を指示された」というAの供述が否定されて、高裁はAの単独犯行と判断。共犯者でなくなったBは殺人幇助の罪で懲役13年となり、Aは「心身微弱状態だった」という主張をしたが認められず、判決は一審と同じく年齢での最高刑である懲役20年のままとなった。最高裁の結論も同じく、2018年9月に二人の刑は確定した。