韓国人が戦慄した小学生殺害事件
韓国の人々にとっては、思い当たる事件ばかりだ。「仁川小学生殺害事件」(2017年)、「淑明女子高校試験用紙流出事件」(2018年)、「陽川区中学生レンタカー窃盗追突事件」(2020年)、「龍仁市アパートレンガ投下死亡事件」(2015年)、さらに「仁川女子中学生集団性暴行」(2019年)など、その他にもさまざまな少年事件を元に物語が再構成されている。
なかでも第1話のベースとなっている「仁川小学生殺害事件」は、その犯行の残虐性と動機の不鮮明さ、また年齢による量刑の違いなどで、韓国社会全体に大きな波紋を投げかけた事件だった。
2017年3月29日、仁川市の新興団地に住む小学2年生の女子児童が、午後になっても家に帰ってこなかった。母親の通報を受けて、警察と近隣住民の協力による一斉捜査が開始された。団地内の監視カメラから児童の足どりが明らかになると、警察はそのカメラが設置されたマンションを一斉捜索。屋上の給水タンク室の上から遺体が、一部破損した状態で発見された。
また監視カメラには「児童を連れた中年女性の姿」が映っていたため、警察は同じマンションに住む住民の中に犯人がいる可能性があると考えた。ところが驚くべきことに逮捕された容疑者は、当初の見立てとは異なる16歳の少女Aだった。
警察の取り調べで、Aが母親の服を着て犯行を行ったことが判明した。つまり、それは「中年女性のふり」をするという偽装工作に他ならない。また遺体処置の周到さなどからも、犯行が偶発的なものではなく、緻密に計画されたものであることは明らかだった。
しかし動機が不明だった。身代金目当てでも性犯罪でもない児童誘拐事件に、小さな子どもをもつ親たちは戦慄した。いったい何が目的だったのか?
翌30日からは、テレビなどでも連日の報道が続いた。Aは事件について「記憶にない」という証言を繰り返していたが、警察の捜査では児童の下校時間を検索した履歴などが発見されており、また共犯者の存在も浮上していた。
その「共犯者B」が逮捕されたのは、事件から13日後の4月11日。驚くべきことに、その「共犯者B」もまた18歳の未成年の少女だった。犯罪の緻密さから「大人の共犯者」を予想していた世間は驚いた。さらに人々を戦慄させたのは、事件当日の夜にBは切り取った遺体の一部を受け取っていたという事実だった。ただしBは「Aから紙封筒を渡されたのは間違いないが、その中身については知らなかった」と供述していた。
当時の警察発表によれば、二人は事件の1ヵ月半ほど前にSNSを通じて知り合い、何度か直接会っていたともいう。そこで二人は犯行を共謀したとされていた。