「軍隊」と呼べない自衛隊の現状

自衛隊が名実ともに日本の独立、国民一人ひとりの人権を守る組織になるためには、憲法を改正して自衛隊を「軍隊」として明確に位置付けることがなによりも必要です。そうしてこそ、政治的中立を維持することや、厳正な規律を求めることができるのです。そうでなければ、真の意味でのシビリアン・コントロールの体制を作ることも、最高裁判所のもとで厳正な規律を担保する軍法会議を設置することもできません。

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かつて「自衛隊は日陰の存在であるべきだ」と訓示した防衛大学校長がいました。

たしかに軍国主義の国のように、軍人が肩で風を切って歩くような社会は好ましいものではないでしょう。だからといっていつまでも自衛隊を「必要最小限の実力組織」と言い繕ったり、「日陰の存在」と呼び続けることがよいこととは思いません。

国家主権を守り抜く組織として厳正な規律が求められる一方で、いつまでも日陰者扱いでは、自衛隊員として自分の任務に誇りや使命感を持つことは難しいでしょう。我が国における正式な「軍隊」と憲法上認めるということは、むしろ国民の側の覚悟が求められることでもあるのです。

現在、日本には軍隊や戦争の歴史について学ぶ施設はありません。どこの国にもその国が関わってきた戦争や、その戦争で軍隊が果たした役割などを学ぶ軍事博物館、戦争博物館があります。日本がなぜ、アメリカとの勝ち目のない戦争に突入していったのかといった教訓なども、本来ならそうした施設でしっかりと学ぶべきでしょう。なのに、日本にはそういった軍事博物館もない。これでは国民が国防に関心を持つことも難しいのではないでしょうか。

今回の等松教授の論考も、一過性だと過小評価しないことです。個人の異論にすぎないと軽視せずに、また防衛大の教授会といった内部で議論される前になぜ外部への告発となったのかについても、さまざまな視点から調査するべきです。

実際にこのところ、防衛省・自衛隊では不祥事が立て続けに起きています。射撃場で自衛官候補生が上官を射殺したり、師団長を乗せたヘリが沖縄の海上で墜落したり、呉を母港とする護衛艦が自分の「庭先」であるはずの瀬戸内海で座礁したり――。変調は防衛大に限ったことではありません。

だからこそ、今回の告発を機に、防衛省・自衛隊という組織の構造的な問題を疑い、点検すべきです。そして、軍隊であるのに「軍隊」と呼べない自衛隊の現状について、国民的な議論を行うべき時期に来ていると思います。

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撮影/村上庄吾