【Xデーマイナス3日①】

( 台湾 )
台北市内の空は黒煙に覆われていた。未明から行われた中国軍の弾道ミサイルや巡航ミサイルなど精密誘導兵器の攻撃によるものである。攻撃目標は台北市の総統府・国防部・外交部・内政部・経済部・交通部・海軍司令部・空軍司令部・憲兵司令部・海巡署(海上警察)及び桃園市の各政府庁舎や軍事施設に加えて、電気・ガス・通信施設などの重要インフラに及んだ。

台湾軍の通信組織には大規模な電子戦攻撃が仕掛けられ、大きな効果を発揮していた。中央から末端まで台湾軍のあらゆる部隊の指揮通信網が麻痺した。
  
中国軍は、偵察衛星や多数のドローンによって台湾軍の部隊、弾薬庫・燃料集積所などの場所を正確に把握し、ピンポイントで攻撃し確実に破壊していった。台湾空軍のバンカー(掩体壕)には、米軍のバンカーバスターと同種の地中貫通型ミサイルを使用した攻撃が行われ、バンカー内に収容されていた多くの戦闘機が破壊された。固定レーダーの防空レーダー施設はそのすべてが巡航ミサイルの攻撃によって破壊され、台湾空軍の防空警戒網は甚大な損害を受けた。

元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第3部】反政府活動で混乱する台湾、中国が夜中に重要施設を攻撃_5

海軍基地も標的となった。基地内に停泊していた艦艇は対艦ミサイルによって沈没、大破した。陸軍の地上発射型対艦ミサイル基地にも巡航ミサイルが飛来し、多数の発射装置が破壊された。

台北市、台中市、台南市の沖合に設置されている機雷網は中国軍の無人水上艇と無人潜水艇によって安全化された。

変電所への攻撃により市内で大停電が発生。港湾近くのガスタンクが爆発炎上しガスの供給がストップした。電話会社のサーバー施設が破壊され、固定・携帯電話が使用できなくなった。

地方都市では、発電施設や燃料施設が自爆ドローンによって集中的な攻撃を受けていた。各都市で空襲警報のサイレンが鳴り響き、脱出しようとする市民の自動車が道路上に溢れて大渋滞を引き起こした。

港では多数の市民が貨物船や漁船に乗り込み、日本やフィリピンなどを目指して出港した。台湾東部の花蓮市沖合では、各国海軍がヘリによるピストン空輸を行い、自国民を脱出させた。

元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第3部】反政府活動で混乱する台湾、中国が夜中に重要施設を攻撃_6

台湾総統府は、政府機能の一部を花蓮市に移設すると発表した。台湾陸軍参謀本部は、花蓮市に所在する第2作戦区の花東防衛部隊司令部を祖国防衛司令部に格上げした。

台北市、台中市、台南市の海岸線に埋設されている対戦車地雷などの対着上陸障害を広域処理するために中国軍が燃料気化爆弾を使用した。この爆弾は、一次爆発で液体燃料をガス化し拡散させ、二次爆発で広範囲に衝撃波と高熱を発生させる。その効果は障害処理にとどまらず、海岸部の住宅や台湾軍防御施設を焼き尽くしていた。
  
SNS上には「台湾政府の政策では、市民の被害が増加していく一方で、中国に降伏するべきだ」「台湾政府・軍は市民を盾にして、自分たちだけ助かろうとしている」など、政府批判が溢れていた。

中国の新華社通信は、台湾市民向けの放送を開始した。「人民解放軍は台湾同朋を解放するために作戦している。この責任は台湾の分裂主義者が取らなければならない」と繰り返し主張した。