決まり画で、決まりの言葉は聞かない
特徴的なのは、メンバーへのインタビューが、彼らが運転する車中や、立ち寄った飲食店で行われていること。その裏には、「なるべく本人たちに語らせない」というこだわりがあったという。
「アーティストのメッセージは、詞とメロディに込められている。その背景や解説も気になるけど、あんまり本人から聞きたくない(笑)。歴史も、バンドが解散していたりすると、『あのときは、こうでした』という烙印を押してもいいと思うんですよ。
でもサニーデイは、今も続いているバンド。決定的な烙印を押すようなことはしたくなかった。だからメンバーには申し訳ないけど、車で運転しながら話してもらうくらいでいいだろうという感覚でした」
その一方で、腰を据えて行っているのが、関係者インタビュー。90年代から交流があるホフディランのふたりや、やついいちろう、MVディレクターの山口保幸、雑誌『BARFOUT!』の編集者だった北沢夏音ら10人以上が、サニーデイについて語っている。ナレーションは、曽我部が過去に楽曲提供をした、小泉今日子が担当。
「付き合いの濃い人たちは、昔のこともよく覚えている。話が面白くて、歴史パートが長くなりました。小泉さんは、詳しくは言えないけど、僕に対する認識もあって意外でしたね(笑)。
完成した映画を曽我部さんに見てもらったら、『面白い!』と。自分のドキュメンタリーを見て、『面白い!』っていう本人はなかなかいないと思うけど(笑)。自分としても好きにやらせてもらったので、満足です」
3カ月ほどで完成の予定が、編集も含めると2年近くにおよんだ『ドキュメント サニーデイ・サービス』。作業を通して改めて感じた、サニーデイの魅力とは?
「僕は1stアルバムの『若者たち』(1995年)が、今でも一番好きなんです。その前のデビュー直後はギターポップで、はっぴいえんど的なフォークロックになって、そこにラップ的な要素が加わり、いきなりロックンロールに(笑)。
曽我部さんがいろんなカルチャーを吸収するごとに、それらを通過した音楽がちゃんと出てくる。それは恐ろしい才能だと思いました。
あと今回感じたのは、バンドをやる難しさ。ラップならDJとラッパーのふたりでできるけど、ロックバンドは最低3人で、楽器も3つ必要。音を出すのも、そこらで出せないから、スタジオに行かなきゃいけないわけですよ。
そう考えると、コスパが悪い(笑)。でも、そういう尺度で測れない魅力がある。ライブシーンで生演奏の迫力も、映画館で感じてもらえたらうれしいです」