前編はこちら>>

ロック好き・松田聖子ファンの少年がAV業界へ

「高校1年生のとき、地元の名古屋のローカル番組で、高校生が松田聖子にインタビューできるという企画があったんですよ。僕は松田聖子が好きだったから応募したら、面接で不合格になって。

でもプロデューサーが、『せっかく来たんだから』と収録現場を見せてくれた。MTVに憧れもあったので、そこからテレビ屋になりたいと思いました」

カンパニー松尾は高校卒業後、堤幸彦らを輩出した東放学園に入学。2年後に制作会社へ就職したが、1年ほどで倒産してしまう。

セクシー業界は昭和・平成・令和でどう変わったのか? 名監督・カンパニー松尾が「頑張る」女優に感じる違和感とは…「俺が撮りたいのは恥ずかしさや後ろめたい気持ち」_1
カンパニー松尾
すべての画像を見る

そのとき、先輩に誘われたのが、設立2年目のAVメーカー「V&Rプランニング」。時は1987年のAV創生期。『全裸監督』で知られる村西とおるが、女優・黒木香をスターダムに押し上げていた。

「会社に行って、まず社長兼監督に言われたのは、『松尾くん、うんこは大丈夫か』。1週間後のロケで、その真意がわかるんですよ。入ったのは、SMをドキュメンタリーで撮る会社。うんこ、おしっこは当たり前で『汚れたら片付けてね』って話だったんです。

衝撃を受けたのは、2本目の撮影のとき。男優さんが時間になっても来ないので、淫靡(いんび)な照明を当てて、女の子を縛り、イメージシーンの撮影から始めたんです。

そうしたら、一緒にモニターを見ていた社長が、いつのまにかフレームインしてきて、いきなり女の子を平手打ちした。そしてパンツを脱いで、『おまえ、こういうのが好きなんじゃろー! くわえろー!」って(笑)。

後で聞いたら社長と女優さんとは旧知の仲で、そういう展開があるとわかってたみたいですが、それを知らずに見て俺は『この人、カッコいい!』と。思春期にシビレた、セックス・ピストルズの『アナーキー・イン・ザ・U.K.』がまた鳴り響きました」

セクシー業界は昭和・平成・令和でどう変わったのか? 名監督・カンパニー松尾が「頑張る」女優に感じる違和感とは…「俺が撮りたいのは恥ずかしさや後ろめたい気持ち」_2
若かりし頃の松尾