守備力・リード面での価値は今もトップクラス

小林が過小評価される要因は、“打てる捕手”が重宝される昨今の球界において、“打てない捕手”という印象があまりにも強く根づいてしまった点にある。ではなぜそのレッテルを張られてしまったのか。

それは通算406本塁打を放った名捕手・阿部慎之助の後継者として、現実的ではない水準の期待が課されてしまったことが一因として考えられる。さらに、2020年代に入ってからは打撃型捕手である大城卓三も結果を残している。

このふたりに挟まれたことが“打てない捕手”のイメージを首脳陣やファンに植えつけてしまったと筆者は見ている。さらに大城よりも4歳若い岸田行倫も昨シーズンはキャリア最多の88試合に出場しており、小林の立場はさらに危ういものになっている。

菅野の精神的支柱でもあった小林(写真/共同通信社)
菅野の精神的支柱でもあった小林(写真/共同通信社)

しかし、けっして数字に表れない“見えない力”こそが、小林誠司の真価である。

「リード」「フレーミング」「ブロッキング」「スローイング」……すべてのディフェンススキルにおいて、今なお大城や岸田を明確に上回っている。このような守備型捕手は試合終盤にこそ輝きを放つのだ。

さらに、投手陣との信頼関係が厚いことも小林の特徴だ。代表的な例が“スガコバコンビ”を組んだ昨年までのエース・菅野智之とのバッテリーだ。菅野が2024年に復活した背景には、小林の的確なリードと精神面でのサポートが大きく影響していたという声も多い。

小林は2017年にDeNAから移籍してきた山口俊ともバッテリーを組み、2019年の最多勝や最多奪三振などのタイトル獲得に貢献した。こうした事実は小林の捕手としての資質と手腕が非常に高いことを証明している。