妻の前で泣きながら読んで
――そもそも遺言伝道師の活動を始めるきっかけは?
妻に遺言書を読んで聞かせたことがきっかけです。それまでは僕自身も手続き書類として考えていました。書き始めたのも「書かなくてはいけない」という事務的な感情からで。でも、書いているうちに自分自身の過去を振り返って「仕事ばかりで家族をないがしろにして生きてきたんだな」と気づき、支えてきてくれた妻に感謝するようになり、その感謝を伝えていないことにも気づかされたわけです。
――遺言書を読んだ時、奥様の反応は?
「ふーん」と、大きな感情の変化は見られませんでした。僕はボロボロ泣きながら読み上げていたんですけれども(笑)。でも、妻とは親御さんのこととか、子供の将来のこととか、いろいろな話ができました。正直、それまでは妻との関係もいいとは言えなかったのですが、少しずつ、お互いに変化ができるきっかけになりましたね。
僕自身もちゃんと家族に目を向けるようになり、生き方が変わることも実感できました。これはただの手続き書類じゃない、遺言書の価値をもっと広めなければならない。そんな思いから遺言伝道師の活動を始めました。
――いいお話ですね。では今後、活動の展望はありますか?
一億総遺言書計画を社会的な問題解決につながる活動にしていきたいと思っています。少子高齢化に伴い、今の相続って高齢者から高齢者へとお金が渡っているのが現状で。これから経済を盛り立てていく現役世代にお金が回らないんですよ。そこを変えていくには、遺言書で相続人以外の人に遺贈することだと思っていて。孫世代にもお金が回っていく、そんなトレンドを作っていきたい。
遺言書は大切な人への「人生最後のラブレター」であって、これまでの人生を振り返って自分の未来を考える「道しるべ」。まずは一度、書いてみていただければと思います!
取材・文/釣本知子 写真/井上たろう
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