とらわれすぎていた過去の自分

──30年前の原作が映画化されるということは、その時代のメッセージが今も通用するからではないかと思います。臭いものに蓋をして問題に向き合わなかった岩切の生き方が今日的でもあると思うのですが、生田さんはこれまで「こういうものだ」と考えられてきたことについて、変えようと思った経験はありますか?

若い頃は、仕事をする上で「こうしないといけない」とか「こうあるべき」などの考えにとらわれすぎて、自分を縛っていたところがありました。

でもだんだんそれが窮屈になってきて、もう「こうしなくてはいけない」というルールに自分を縛るのはやめようと、少しずつ剥がして自分を解放してきました。そのおかげで、今はその場で起こることにフレキシブルに対応できるようになったと思います。

「僕の肌が荒れて見えるのはメイクなんです」生田斗真が“最強の凡人”を演じて脱却した過去のルール…映画『渇水』_4
©「渇水」製作委員会
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──『渇水』は豪華キャストですよね。生田さんはもちろんですが、磯村勇斗さん、門脇麦さん、宮藤官九郎さん、岩切の妻役は尾野真千子さんが演じています。完成した映画を見た感想を教えてください。

確かに豪華メンバーですよね。俳優のみなさんは、僕と同じように制作陣の熱意に心を動かされて出演を決めたのではないかと思います。

試写を見せていただいた後に思ったのは、劇中でヘビイチゴを食べるシーンと同じ感覚です。酸っぱいと思ったら後から苦味も来るみたいな。そして、その味がずっと残っているし、忘れられない。そんな感じの映画になっていると思います。

いろいろ考えさせられる映画であり、誰もが経験することを描いているからこそ、余韻があるのではないかと思います。

──向井秀徳さんが担当する音楽もよかったですね。

最後に向井さんの曲が流れると気持ちがホッとして、希望が見えるような印象がありました。監督が向井さんには映画音楽を依頼したそうなのですが、楽曲(主題歌『渇水』)も作って来てくれたそうです。映画を見ていただけるとわかるのですが、あの曲がこの映画の救いになっていると思います。

実は向井さんと同じ日に試写を見たんですよ。初対面だったのですが「飲みに行きましょう」と誘っていただき、一緒にお酒を飲ませていただきました。うれしかったですね「ヤバいぞ! ZAZEN BOYSの向井秀徳さんと飲んでいるぞ、俺」みたいな(笑)、夏のいい思い出です。


取材・文/斎藤香

生田斗真 いくた・とうま

1984年10月7日生まれ。北海道出身。1997年NHK連続テレビ小説『あぐり』で俳優デビュー。数々のドラマや舞台で活動し、2007年『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』の演技が話題に。2011年映画『人間失格』『ハナミズキ』で第84回キネマ旬報ベストテン新人男優賞、第53回ブルーリボン賞新人賞を受賞。主な出演作は『土竜の唄』シリーズ(2014、2016、2021)『彼らが本気で編むときは、』(2017)『友罪』(2018)ほか。近作は映画『湯道』(2023)、ドラマ『大河ドラマが生まれた日』(2023/NHK総合)『幸運なひと』(2023/NHK-BS)。主演ドラマ『警部補ダイマジン』(テレビ朝日系)が7月放映開始。

『渇水』(2023)上映時間:1時間40分/日本

「僕の肌が荒れて見えるのはメイクなんです」生田斗真が“最強の凡人”を演じて脱却した過去のルール…映画『渇水』_5


水道局員の岩切俊作(生田斗真)は、同僚の木田拓次(磯村勇斗)とともに水道料金の滞納が続く家を訪ねて停水を執行するのが仕事だ。ある日、滞納している小出家を訪ね、有希(門脇麦)に支払いを求めると無理と言われる。1週間の猶予を与えて、再び家に出向くと、有希は不在。岩切は、彼女の娘の幼い姉妹(山﨑七海・柚穂)と家の中のありったけの入れ物に水を溜めてから停水を執行するのだが……。

6月2日(金)より全国ロードショー
配給:KADOKAWA
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/
©「渇水」製作委員会