#2 東出昌大が “俳優”を手放さない理由を読む

奇跡を願ったことは、僕にもある

「とにかく生きる。そして辛くなったら逃げる」東出昌大が語る、悲しみとトラウマの乗り越え方_1
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──『とべない風船』に出演したいと思われた理由から教えてください。

台本を読んですぐ「やりたい」と思いました。すでに完成した映像を見ているかのように描写が浮かびましたし、リズム感も伝わってくるような台本でした。
その後、監督とプロデューサーさんが広島からわざわざ手土産を持って会いにきてくださって。もうそこからは腹を割って話しながら、「いいものを作りましょう」と、手を携えて進んでいきました。

──東出さんが演じられたのは、豪雨災害で妻子を失った漁師の憲二役。心を閉ざし、周囲から孤立しているキャラクターです。

不器用な人だなと思いました。でも、愛情深い人だな、とも。悲劇があって家族を失った後も、島から離れられない生き方もそうですし、「もしかしたら(妻子が)生き返ってくれるかも」みたいな気持ちもそう。

自分だけには、そういう超常現象が起きるんじゃないかと思っている。神を信じるような気持ちは、本当に大切な人を失った後に僕自身も抱いたことがあるので、理解ができました。

──それはどんなタイミングで?

僕は猫を亡くしたときと、父を亡くしたとき。「奇跡、起これ!」って思ったことがあります。でも、今思い返すと、時間だけが薬だったなって思います。

──憲二は亡くなった家族に心の中で語りかけますが、東出さんは?

あまりしないかな。実家にたまに帰って仏壇に線香をあげるときに、「親父、帰ってきたよ」と手を合わせることはあっても、語りかけることはしないかも。

ただ、どう思うかな、と想像することはあります。例えば映画賞をもらったスピーチの後に「親父が聞いていたら、喜んでくれたかな」とか。

仕事でヘマこいて色々なことがあったときに「今のこの状況、親父が見たら心配するかな」とか。そういう想像はします。