夜の静也は、何度演じても気持ちよかった

「僕の芝居を見るために、命を燃やしてくれた人がいる」映画『静かなるドン』主演の伊藤健太郎が忘れられないあるファンとの出会い_1
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──原作の存在は知っていましたか?

喫茶店や銭湯に漫画が並んでいるのを見たことはあったので、存在自体は知っていましたが、中身をガッツリ知っていたわけではなくて。オファーをいただいてから色々と調べましたが、とにかく静也のキャラクターに心をくすぐられました。争いごとを嫌い、カタギとして平和に生きたいと願う静也の強い信念は、同じ男としてかっこいいと思いました。

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デザイン会社で働く昼の静也は明るく陽気なキャラクター

──この作品の見どころは、静也の二面性を演じた伊藤さんのお芝居のギャップにあると思います。昼間のサラリーマンの静也は、かなりはっちゃけて演じられていましたね。

本番前に監督に「1回マックスで演じるので、ダメだったら“やりすぎ”と言ってください」とお願いして。とにかく思いっきり「お〜はよ〜ございまあ〜す♪」と出社したり、テンションの高いおちゃらけたシーンを撮りました。

暴力団側のシーンの合間の3〜4日でまとめて昼のカタギ側シーンを撮影したので、全く別の作品に入ったような感覚でした。

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父の死をきっかけとして、暴力団総長を引き継ぐことに

──夜の静也の場面ではアクションをしたり、引き締まった肉体も披露されています。原作の静也は背が低い小太り体型ですが、どのように役を作り上げましたか?

僕は原作ものを演じるときに、あまり読み込みすぎないようにしているんです。もちろんリスペクトは込めますが、原作のままの姿を目指すのであれば、アニメでいいんじゃないかなと思うんです。せっかく実写化するなら、漫画の世界を飛び越えたものを表現することに意味があると、いつも思うんです。

大まかなキャラクターの方向性は一緒でも、ビジュアルを寄せることはそれほど意識せずに演じました。とはいえ、サングラスをかけて白いスーツを着たときは、やっぱりテンションが上がりました(笑)。

──女性人気が高い作品としても有名です。

撮影現場でも「夜の(暴力団総長の)静也と昼の(サラリーマンの)静也、どっちがいい?」という話になって、女性スタッフさんの間でも大きく意見が分かれていました。

──伊藤さんはどちらが好きですか?

昼があるからこそ夜がかっこいいと思える部分もあるし、夜があるから昼がおもしろく映る。だからどっちか決めるのは難しいですけど、夜の総長としての静也は、何回演じても気持ちよくなってしまう部分はありました(笑)。

──若頭を演じた深水元基さんをはじめ、大勢の男たちが静也の周りにいますしね。

そうなんです。めちゃくちゃ身長が高い人たちがばーっと静也を助けに来てくれるシーンがあったり。周りの人たちとの掛け合いが楽しかったし、こんなに心強いチームはないなと思いました。