2015年に未達成に終わったMDSs
そもそも、SDGsが掲げた盛りだくさんな目標は、持続可能な社会を築くために「最低限これぐらいは念頭に置いておきましょうよ」というものだと私は受け止めています。一応は「2030年までに達成する」としてはいますが、具体的な数値目標があるわけでもありません。
ちなみに国連は、SDGsを立ち上げる前に、おもに開発途上国の課題に焦点を当てた「MDGs(ミレニアム開発目標)」を掲げていました。その達成期限は2015年でしたが、「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」といった八つの目標が完全に達成されたとは思えません(もちろん一定の成果はありましたが)。
ちなみにMDGsの七番目は「環境の持続可能性確保」ですから、明らかに未達成。言うまでもなく、現在もその努力は継続中です。
SDGsは、そのMDGsをバージョンアップした後継プロジェクトと位置づけられます。2030年の達成期限を迎えたら、おそらくMDGsと同じようにお役御免となり、また新たな旗が用意されるに違いありません。
国連としては、そうやって「みんなが楽しく幸せに暮らせる世界にするために、最低限これぐらいは考えましょうよ」と言い続けることで人々の意識を変え、少しずつ世界を良い方向に転換させたいのでしょう。せめて、持続可能性を高めることに対して後ろ向きな人たちを減らしたい。本音はそれぐらいのことだと私は思っています。要するに、国連も「ぼちぼち」やっている。だから、明確な達成基準もありません。
そういう漠然とした努力目標にすぎないのですから、その趣旨に賛同しつつ、無理のない範囲で取り組めばいいのだと思います。いずれにしても、SDGsのために個々人の暮らしが楽しくなくなったのでは本末転倒です。
いくらか我慢して生活スタイルを変えることはあるかもしれませんが、「自分も楽しく幸せに暮らしたい」という当たり前のニーズを犠牲にしてまでやるようなことではありません。むしろ、「いかに楽しく生きるか」という自分の生活の持続可能性を考えることも含めて、SDGsだと言ってもいいのではないでしょうか。