若者たちの「サステナブル疲れ」

ところが、いまはとくに若い人の中に「SDGs疲れ」や「サステナブル疲れ」が広がっているという話も聞くようになりました。高校や大学でSDGsを積極的に取り上げるようになると、良い成績を取りたい若者はそれを避けて通ることはできません。

さらに就職活動をする学生は、企業説明会でもSDGsセミナーのようなものを受けることがあるそうです。社会の持続可能性に無関心な人間は高く評価されないのではないか、というプレッシャーを感じてしまったとしても無理はないでしょう。

【SGDsにモヤッ?】 SGDsという「正義」を振りかざす大人に疲れてしまう子供たち。あなたは「サステナブル」の強要をしてしまっていませんか?_4
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そういうストレスを与えるのは、大学や就職活動の場だけではありません。SDGsの影響もあって、近年は「サステナブル」を謳う商品も増えました。それを使っていると「いい人アピール」ができるので、たとえばステンレス製のストローのような脱プラスチック商品など、サステナブルな持ち物の写真を頻繁にSNSにアップする人もいるようです。

それはそれで個人の自由ですが、いちいちそれを見せられるほうはなんとなく「みんなも使えば?」というプレッシャーを感じます。

そういう人の中には、直接「まだプラスチックのストローなんか使ってるの?」と批判めいた調子で言ってくる人もいるでしょう。「正義」を背負った人が自分の日常生活に介入してくるのは、気持ちのいいものではありません。

また、自分で自分に「こうあらねばならない」とプレッシャーをかけている人もいると思います。脱プラスチックや省エネなど、環境への負荷を軽くするための「エコ」な生活スタイルを徹底しなければならないと自分に言い聞かせて、その不便さに耐えている。

それこそ家庭ゴミの分別だけでも、厳密にやろうとすると「これはどっちなんだ?」といちいちネットで検索して調べたり、パッケージの金属部分と紙部分を分けるために解体したりなど、けっこうなストレスになるでしょう。

毎日のことですから、完璧を目指していたら疲れてしまうのも当然です。


文/酒井敏 写真/shutterstock

カオスなSDGs グルっと回せばうんこ色
酒井 敏
【SGDsにモヤッ?】 SGDsという「正義」を振りかざす大人に疲れてしまう子供たち。あなたは「サステナブル」の強要をしてしまっていませんか?_5
2023年4月17日発売
968円(税込)
新書判/208ページ
ISBN:978-4-08-721259-4
【元京大変人講座教授、SDGsにモヤモヤする!】
近年声高に叫ばれる「SDGs」や「サステナブル」といった言葉。環境問題などの重要性を感じながらも、レジ袋有料化や紙ストローの導入、そしてSDGsバッジなどの取り組みに、モヤモヤしている人は少なくないのではないか。

「京大変人講座」を開講した著者は、大学で「SDGs担当」になったことをきっかけに、その言説や取り組みに違和感を覚えた。人間や地球環境にとって、ほんとうの「持続可能性」とは何か。名物教授が科学的観点と教育的観点からSDGsのモヤモヤを解き明かす。

【おもな内容】
プロローグ 「キレイ」なSDGs
第1章 危ういSDGs
第2章 プラゴミ問題で考える持続可能性
第3章 地球温暖化とカオス理論
第4章 無計画だからこそうまくいくスケールフリーな世界
第5章 日本社会の自由度をいかに高めるか
終章 うんこ色のSDGs
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