若者たちの「サステナブル疲れ」
ところが、いまはとくに若い人の中に「SDGs疲れ」や「サステナブル疲れ」が広がっているという話も聞くようになりました。高校や大学でSDGsを積極的に取り上げるようになると、良い成績を取りたい若者はそれを避けて通ることはできません。
さらに就職活動をする学生は、企業説明会でもSDGsセミナーのようなものを受けることがあるそうです。社会の持続可能性に無関心な人間は高く評価されないのではないか、というプレッシャーを感じてしまったとしても無理はないでしょう。
そういうストレスを与えるのは、大学や就職活動の場だけではありません。SDGsの影響もあって、近年は「サステナブル」を謳う商品も増えました。それを使っていると「いい人アピール」ができるので、たとえばステンレス製のストローのような脱プラスチック商品など、サステナブルな持ち物の写真を頻繁にSNSにアップする人もいるようです。
それはそれで個人の自由ですが、いちいちそれを見せられるほうはなんとなく「みんなも使えば?」というプレッシャーを感じます。
そういう人の中には、直接「まだプラスチックのストローなんか使ってるの?」と批判めいた調子で言ってくる人もいるでしょう。「正義」を背負った人が自分の日常生活に介入してくるのは、気持ちのいいものではありません。
また、自分で自分に「こうあらねばならない」とプレッシャーをかけている人もいると思います。脱プラスチックや省エネなど、環境への負荷を軽くするための「エコ」な生活スタイルを徹底しなければならないと自分に言い聞かせて、その不便さに耐えている。
それこそ家庭ゴミの分別だけでも、厳密にやろうとすると「これはどっちなんだ?」といちいちネットで検索して調べたり、パッケージの金属部分と紙部分を分けるために解体したりなど、けっこうなストレスになるでしょう。
毎日のことですから、完璧を目指していたら疲れてしまうのも当然です。
文/酒井敏 写真/shutterstock