難病の原口議員も応援演説に
また、この日は東京から原口一博衆議院議員が駆けつけていた。よく知っている風貌とは全く違う。スキンヘッドに眉毛も薄く、薬の副作用なのだろうか…。だが、その応援演説は鬼気迫るものがあった。
「難病を患いまして…昨日退院し、医者には安静にしてろと言われましたが、いてもたってもいられず、有田さんの応援に駆けつけました。今、日本は…本当に危機的状況にあるんです!」
原口議員の言葉は胸を突き刺すものがあった。振り絞るように吐き出す原口さんの「覚悟」があまりにすごすぎて、政策話があまり頭に入ってこなかったほどだ。ただ、残念なことに立憲の準備不足は否めず、有田・原口両氏の演説はほとんど観客がいないスーパーの駐車場に響くだけだった。
朝7時過ぎから辻立ちを始め、20時まで選挙カーで市中を回り続けた有田さん、御年71歳。
「負けることは恥じゃないんです。戦わないことが恥なんです」
今回の選挙では「第三奇兵隊」を掲げる有田陣営。長州征伐を受け、逆境の中、わずか少数で挙兵した高杉晋作に倣っていた。敵が巨大なのは承知の上だ。立憲民主党のある地元市議がこんなことを語ってくれた。
「我々も諦めていた部分があるんです、この山口四区は。あまりに安倍さん一派が市政から県政、産業界も握っていたのでね。しかし、安倍さんはもういない。そこに有田さんです。知名度は高いし、統一教会問題のプロという信頼度もある。これはいけるんじゃないか、という空気が一気に広がっているのは確かです」
有田さんは、終始「楽しくて愉快な選挙だ」と話していたが、その言葉の裏には、こんな思いと覚悟があった。
「開票日の20時ちょうどに相手に当確を打たせないたくない。意地でも“ゼロ打ち”させたくないんです。21時でも打たせない。ずーっと当確を出させない。その戦いなんですよ」
――どんなことをしても勝ち切るって有田さんは信じているんですよね?
「ここは岸さんから始まり晋太郎さん晋三さんと70年間変わらず自民党だった土地です。磐石です。でも、せめて他の選択肢があるんだ…と市民に伝えたいんです」
にこやかな瞳の奥に冷徹な意志が見えた。負けを承知の自己犠牲。岩盤を少しでも溶かす、残り3日間の戦い。その覚悟が“楽しい”という言葉に凝縮されているように感じた。