「10年間も総理を務めた方を生んだ街とは思えない」
4月19日。朝一の便で下関入り。19時の上映会まで、選挙で沸く街の様子を取材した。好天に恵まれ、海風や関門橋を望む港の景色など、何もかも心地がいい。
本作でも描いたシャッター街に驚いたのは同行した助監督。下関の様子は編集素材だけでしか知らない。
「駅近のメイン大通り面しているビルなのに無人? 商店街もヤバいっすね」
下関市が一押しするスポットの唐戸市場も平日は落ち着いている…というか閑散。週末だけ、周辺だけ賑わう週末観光地と揶揄されるように隣接した商店街はシャッターが並ぶ。人口減少は全国トップクラスという事実が、バランスを欠いた市政を示している。
「10年間も総理を務めた方を生んだ街とは思えないわよねぇ…何か下関にいいことがあったのか、教えてほしいくらい」
これは本編からは編集で落ちてしまった街のご婦人の声だ。
まず向かったのは、自民党陣営。吉田真次候補の事務所となっていたのはかつての安倍事務所で、秘書も含めそっくり入れ替わったとか。
彼の演説予定を確かめるべく訪問してみると、目に飛び込んできたのは、天井一面ビッシリ覆い尽くされた為書(「為吉田真次候補 祈必勝」と書かれた選挙必須のアイテム)。それを見て何故か「耳無し芳一の顔」を連想した。
現場ではスーツ姿の数十名ものスタッフが忙しなく事務に追われ、緊張感に満ちていた。
「カメラ撮影? 許可のことは現場で聞いてくれる?」
スタッフ達の私への視線が訝しげで冷たい。この直前、岸田首相を襲った爆弾騒動もあったのだから仕方がない。
すでに吉田候補一行は、長門市に向かっているという。この日の夜、決起会になんと自民党の麻生太郎氏、ジャーナリストの櫻井よしこ氏も登壇するらしい。だが残念ながら同時刻に、こちらは舞台挨拶と丸かぶり。
それにしても先日は菅元首相が、その前は萩生田氏、下村氏、江島氏といった大物議員たちが続々と「まさに教会ならぬ“統一”の選挙」とばかりに、無名の若手新人候補にわざわざ駆けつけるとは…どうやら「あの噂」は本当のようだ。