2017年から活動している「カタルシスの岸辺」。カットされた映像や使われなかった写真のデータ「死蔵データ」を素材として、その販売や加工サービスなどを行っている。
このグループが昨年から開催してきたのが「死蔵データGP」だ。一般応募254件の死蔵データを、審査員73名を招いて真剣に審査。1位には賞金10万円を授与するという“死蔵データの大会”である。
著名アーティストや批評家などの多様な審査員による予選を経て、一般観覧も招いた3月の決勝戦でついに決着がついた。
乱暴にまとめれば、“ゴミの再利用”に10万円。しかし、「誰にも見せていないけど消すこともできない」という死蔵データには謎の魅力があるという。その見どころとはいかに?
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死蔵データには「欲望が詰まっている」
――「死蔵データGP」の開催理由は?
荒渡巌(以下、荒渡) 死蔵データの「仕入れ」はこれまで知り合いからということが多く、自然とアーティスト寄りのものになっていました。
もっと多様な人の死蔵データを見てみたいし、そのためにより幅広い人を巻き込める仕組みとしてコンペティションを企画しました。
――そもそもなぜ死蔵データに注目したのでしょうか?
荒渡 特に映像作品の場合、作品に使われるのは撮影したうちのごく一部。カットされたデータを見せてもらうと、そのままでも見応えがあってもったいないんですよ。なので、再流通させたいと考えました。
海野林太郎(以下、海野) 作品にしない、SNSで公開もしないけど、消してもいないという微妙なデータ。だから、欲望がそのまま詰まっているというか。
宍倉志信(以下、宍倉) 公開するものは取捨選択されていますからね。
海野 今は隠したい欲望が死蔵されていて、隠された中にきらめきがある。死蔵データはこの時代だから発生しているものなんです。
荒渡 スマートフォンなど身近なデバイスで簡単に撮影できるから残ってしまうというのもあるね。