古いエクセルデータから垣間見える人の営み

――では、印象的な死蔵データは?

海野 「おばあちゃんの視点と指」という、過疎地域でデコチャリを走らせる応募者を自分の祖母に撮ってもらったという映像データ。おばあちゃんが(カメラでの)撮り方をわかってないからブレ方が新しかった。

荒渡 あらゆる構図が決まってなくて最高。

高見澤峻介(以下、高見澤) 静かな情景にお互いの信頼関係が感じられて、おばあちゃんが孫を見ている視点なんですよね。でも、ムダに長い。

“いらない画像”に賞金10万円!? 現代美術作家が仕掛ける「死蔵データグランプリ」の狙いとは_6
「おばあちゃんの視点と指」の一場面

荒渡 家庭のストーリーを感じる死蔵データというのもありますね。子どもにご褒美としてあげたのであろう「ゲームプレイ時間延長券」のエクセルデータも面白くて、相当古いみたいで貼ってあるイラストの「Web1.0感」がすごい。

海野 いいご家庭なんだろうね。審査ではギリギリで競り負けてしまったけど……。

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「ゲームプレイ時間延長券」のエクセルデータ

大山 「おっちゃん」という写真はすごかったです。圧倒的な絵で普通に写真作品として完成されているから、「死蔵データ」としてはどうなんだ?と。

でも、おそらくそこには撮影者の作品としては発表しない何かがあるんですね。

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写真作品の「おっちゃん」

海野 とにかく写真としていいから結局みんなほとんど満点をつけていて。死蔵データの概念を突破してきましたね。

荒渡 この名作は、死蔵データとして1100円で買っていただけますので。ぜひプリントして飾ってください。