無職時代のメモ、ボツの修士論文…まさに死蔵
――「死蔵」の中にも見応えのあるデータが存在するんですね。逆に「死蔵っぽい」ものもありますか?
岡千穂 (マイコンの)Arduinoで、LEDを3つ光らせるだけのプログラミングデータとか。
高見澤 あれはコードが長すぎて初学者だとわかるのもよかったですね。
荒渡 昔のMacintoshのペイントソフト「KidPix」のデータを送ってくれた人は、もうソフトが最新のOSに対応してなくて開けないのでわざわざ出力見本の画像をつけてくれました。
宍倉 逆に今っぽくiPhoneのメモ帳のスクリーンショット画像というのもありましたね。「無職時代のメモ」という。
海野 まさに欲望の残滓って感じ。これが審査では勝ち上がるのが面白い。
大山 ボツの修士論文もあったよね。
荒渡 留年しちゃったやつね。
高見澤 でも留年した理由はわかる(笑)。
――これだけデータが集まり、審査をしてみていかがですか?
みずしま 応募者側も「死蔵データが何か」を考えていて、巻き込まれてくれているなと感じます。
宍倉 応募や審査を通して「死蔵データ観」が形づくられている気がしますね。「死蔵データ」を言い出した主催者側には価値がわからないと思うデータが勝ち上がったりもするし、拡大していっているのでは。
荒渡 審査することで相対化されてわかりやすくなっては来たよね。
海野 死蔵データという一般的にはマジでいらないものを、審査を通してすばらしいアーティストであったり、他のジャンルのすばらしい方々と共有していること自体がすごく幸せな体験ですね。
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「一番おもろいやつらの頭脳が集まって、いらないデータの一番を決める」という死蔵データGP。4月末まで決勝戦の見逃し配信が見られる。
取材・文・撮影/宿無の翁
画像提供/カタルシスの岸辺