#1 バイアグラは2時間持続する。では、結婚の幸福の持続時間は?
#2 浮気が一番多いのは結婚して何年目?

結婚は「社会で生き延びるためにするもの」

昔は、結婚がすべてを制していた……。しかしその当時、結婚は愛とは関係がなかった。

実のところ、歴史的に見れば、「愛が結婚をだめにした」とも言えるかもしれない。あるいは、「愛が結婚に打ち勝った」とも言える。歴史家のステファニー・クーンツが指摘するように、有史時代の大半を通して、結婚のテーマソングは、ティナ・ターナーの『愛の魔力』(“What's Love Got to Do with It”=愛と何の関係があるの)だったかもしれない (この曲を結婚式で使うのはお薦めしないが)。

【結婚しない若者たち】結婚は「社会で生き延びるためにするもの」だった時代から、天井知らずの期待をするものとなった現代の弊害とは_1
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有史の大部分において、結婚は愛よりもむしろ経済との関係が深かった。何も邪悪な計画の一部だったわけではなく、当時は生活がとんでもなく苦しかったという事実によるものだ。

「恋愛結婚」は、現実的な選択肢ではなく、むしろ「死なないように助けて」というのが当時の典型的な結婚だった。人生は意地が悪く、残忍で、短いことが多かった。自分一人の力ではやっていけない。食べ物を口にすることや盗賊を追い払うことが最優先で、個人としての充実感は後回しにされていた。

歴史家のクーンツは、現在、政府や市場が担っている役割を、結婚が果していたと指摘する。また、社会保障や失業保険、医療保険がなかった時代に、それらの代わりを果たした面もある。今日のキャリアが請求書の支払いのためのもので、自分が情熱を持てるかどうかと必ずしも関 係ないのと同様に、当時、誰と結婚するかは支払いのためであり、自分が夢中になれる相手かどうかはあまり関係がなかった。結婚相手は、ソウルメイトというより、同僚に近かったのだ。

一方、金持ちにとっての結婚の歴史は、MBA(経営学修士課程)のM&A(企業の合併・買収)の授業のようなものだった。重要なのは、然るべき相手を見つけるより、然るべき姻戚を得ること。今でこそ義理の親族に文句もあろうが、昔はそれこそが結婚する理由だった。

考えてみてほしい。恋愛し、子どもをつくるためにではなく、有力な家族と長期にわたる協力関係を築くために婚姻が必要だったのだ。実際、中国など幾つかの国では、「亡霊婚」が見られたほど、義理の家族が重要視されていた。そう、死者と結婚するのだ(良い点:夫婦喧嘩はなさそうだ)。北米大陸の太平洋岸北西部に住む先住民、ベラクーラ族の社会では、然るべき姻戚を得る競争があまりに激しかったので、他家の犬と婚姻関係を結ぶこともあった。本当のことだ。