恋人ができると、友だちは2人減る
しかし、このような自由にマイナス面がないわけではない。ノースウェスタン大学の社会心理学者、エリ•フィンケル教授は、現代のパラダイムを「自己表現的な結婚」と呼んでいる。つまり、結婚の定義はあなた次第―これはちょっと怖ろしい。
あなたは、自分が結婚に何を望んでいるか、はっきりわかっているだろうか? わかっておいたほうが身のためだ。
結婚はもはや教会や政府、家族や社会によって定義されるものではない。言ってみればDIYキットで、取扱説明書は別売りだ。昔の制度的結婚は、たしかに多くの意味で不公平、不平等だったが、ルールは明確だった。今日、私たちは混乱している。
しかもそれだけではない。私たちの結婚に対する期待値は、天井知らずになっている。過去に結婚が提供してくれた多くのものを依然として求めるのに加え、今では、結婚はすべての夢を叶えてくれて、最高の自分を引きだしてくれて、成長し続ける機会をあたえてくれるべきだと考えている。
ローリング•ストーンズの『無情の世界』(”You Can’t Always Get What You Want”=欲しいものがいつも手に入るとは限らない)はプレイリストに入っていない。人びとは不幸だから離婚するのではなく、もっと幸せになれる可能性があるから離婚するのだ。
フィンケルによれば、以前は配偶者と別れるのに理由を必要としたが、今は配偶者でい続けるのに理由を必要とする。さらに、結婚に対する期待値は高まっていながら、それに応える私たちの能力は下がっている。夫婦ともに仕事をする時間が増え、いっしょに過ごす時間が減っている。1975年から2003年のあいだに、平日に夫婦がともに過ごす時間は、子どもがいない場合には30%、子どもがいる場合には40%も減少した。
それと同時に、結婚は、本来その負担を軽減してくれるようなほかの関係を締めだしてきた。オックスフォード大学のロビン・ダンバーの研究によると、恋人ができると、(時間と精神的エネルギーの面で)親しい友人2人が犠牲になるという。
またエリン・フィンケルによると、1975年にアメリカ人は、週末の1日につき平均2時間を友人や親せきと過ごしていたが、2003年には、その時間数が40%減少したという。その一方で、1980年から2000年のあいだに、幸せな結婚が個人の幸福度を予測する 度合いはほぼ2倍になった。結婚は人びとの人間関係の一つではなく、まさに人間関係そのものになった。
私たちは、人生全体の“配偶者化”を経験しているのだ。
#1 バイアグラは2時間持続する。では、結婚の幸福の持続時間は?
#2 浮気が一番多いのは結婚して何年目?