#1 バイアグラは2時間持続する。では、結婚の幸福の持続時間は?
#3 結婚への期待値が高まりすぎた現代の弊害

浮気は4年目に一番多い

 紀元前38年ごろ、ローマの詩人ウェルギリウスは「omnia vincit amor」、すなわち、「愛はすべてに打ち勝つ」と書いた。

聖書のなかにも同様の言葉がある。コリント人への手紙13章7節には、「愛はすべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える」とある。この言葉は今日でも、歌や映画、結婚式などで耳にする。

浮気が一番多いのは結婚して何年目? 人生で2番目にストレスが大きいといわれる「離婚」は刑務所に入る以上のストレスで、さらに悪いことに…_1
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しかし、それは真実だろうか? 愛は本当にすべてを克服するのだろうか? もちろん、そんなことはない(この調子では、本章はとても短く終わりそうだ)。

私は詩的許容を大いに支持するほうなのだが、最近の離婚の統計を見たことがあるだろうか? あなたがグーグルで検索する手間を省こう。

アメリカでは、結婚の約40%が離婚にいたっている。「七年目の浮気」とよく言われるが、浮気はむしろ4年目に多く、結婚から四年後の離婚が最も多い。しかも、こうした統計は世界的に見られる(人類学者のヘレン・フィッシャーは、アメリカでは、10人に1人の女性が40歳まで に3回以上結婚すると指摘している)。

がっかりさせることばかり言いたくないが、もし40%の確率で衝突事故を起こす車が、「わが社の車はすべてを克服します」というスローガンを掲げていたら、集団訴訟を起こされるだろう。ファイザー社が当初、バイアグラを見誤っていたように、私たちは愛について多くの神話や誤解を抱いている。

一例を挙げると、愛は、中世の宮廷恋愛から始まったわけではない。ロマンチックな愛は、ずっと昔からあった。最古の恋愛詩は、3500年以上前のエジプトまで遡る。そして愛は、世界共通のものだ。人類学者が調査した168にのぼる文化の90%に愛の概念があり、残りの10%は、確認に必要なデータが不足していただけだった。

恋愛の経験に関しては、調査対象となった国、年齢、性別、志向、民族の違いにかかわらず、おおむね一貫性が見られる。歴史上、多くの文化(シェーカー教徒、モルモン教徒、東ドイツを含 む)が恋愛を抑えつけようと試み、いずれも見事な失敗に終わったことから、ほぼ間違いなく 生得的な感情だとわかっている。