「別冊マーガレット」に出会って
「こんな世界があったんだ!」と思った
——『花より男子』が「最も多く発行された単一作者による少女漫画のコミックシリーズ」として、ギネス世界記録に認定されたそうですね。日本語版の紙の本だけで5940万9000部発行された、と。すごい数です。
本当に…すごくたくさんの方が読んでくださったり、購入してくださったりした、ということですよね。あらためて大変嬉しく思っています。
——電子版や海外版の発行部数も入れたら、さらにすごい数字になりそうです。世界中に熱狂的なファンの方がいらっしゃることに関しては、どう感じておられますか?
「まさかこんなところで!」と、遠い国で読者の方に会うこともあって。たとえばスペインへサイン会に行ったときも、皆さん熱烈に迎えてくださいました。
恋愛は普遍的なものなので海外の方にも伝わりやすいのかなと思うのですが、たとえば制服を着ていたり着ていなかったりとか、日本の高校らしい部分やディテールもちゃんと伝わっているのがすごく嬉しかったです。
——神尾先生は12年間「マーガレット」で『花男』を連載されたあと、『キャットストリート』を「別冊マーガレット」(以下、別マ)で、その後は『まつりスペシャル』を少年誌の「ジャンプスクエア」で、といったようにいろいろな媒体で連載されています。あらためて「マーガレット」および「別冊マーガレット」という媒体を振り返って、どんな雑誌だと思われますか?
やっぱり憧れですよね。私は中学生の頃に初めて「別マ」に出会ったのですが、「こんな世界があったんだ!」と驚きました。それまで少年漫画しか読んでいなかったので、「別マ」の世界に触れて「これはすごい!」と思ったんです。
だって「別マ」の作品に出てくるようなカッコイイ男の子は、リアルな世の中にはいないじゃないですか。でも、「別マ」の中にはいる。普通の女の子に、学校で1番カッコイイ男の子が告白してきてくれる。「ありえないな…」と思いつつ、すごく夢がありました。
——冷静さを持ちつつも、夢があると思いながら読めていたんですね。
はい、そこは切り離して(笑)。漫画を読むときは、もうどっぷりと「なんて素敵な世界!」と思って読んでいました。
——その後ご自身がマーガレットで連載するようになって、どんな雑誌だと感じられましたか?
「マーガレット」と「別マ」では、それぞれ違うイメージを持っていて。少し専門的なことを言ってしまうと、「別マ」は月1回発行で、1回45ページくらい。一方の「マーガレット」は、月2回発行で1回25ページ。なので、話の展開が全然違うんです。
「別マ」は、どちらかというと毎回読み切りを描いているようなイメージです。『花男』は、「マーガレット」だからこそできた作品だと思っています。
——なるほど。たしかに「マーガレット」はエンタメ性の強い『花男』にぴったりです。以前、神尾先生のマンガ像には「プロレスの存在が大きい」とお話しされていたことを覚えています。具体的には「カタルシスのあるお話が好きなのもそうだし、『もうダメだ』と思ったところで『起死回生!』という感じになるお話を描いてしまうのも、プロレスの影響だと思います」とおっしゃっていました。
はい、そうですね(笑)。
——『花男』はもちろん、次の連載『キャットストリート』も主人公の気持ちに寄り添いながらドン底から立ち上がる姿をじっくり描いていて、読んでいても力が湧いてきます。
ドラマチックなものを描くのが好きなんですよね。山があって谷もあるみたいな…平坦でないものが好きで、どうしてもそういう作り方になってしまう。淡々としたおしゃれな作品を描くことに憧れはあるのですが、私には描けなくて。
——エンタメに舵を切って描かれているので、読んでいてずっと楽しいですし、気持ちよく読み終わることができます。
ありがとうございます。そう思っていただけたらいいなと考えながら、描いていました。