やったことのないことを
やってみたくなる
——2015年から始まった『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』はアプリ・Web媒体の「少年ジャンプ+」での連載でした。それまでの紙媒体での連載と、どんな違いを感じましたか。
配信された瞬間に反応が返ってくるのがすごくいいなと思いました。あとは夜12時を過ぎたらその場ですぐに読めたりするので、より気軽というか、漫画が身近なものになりますよね。私もアプリで漫画を読んだりしますが、すごいことだなと思います。
——ここ数年で漫画を描く環境も、読む環境もデジタル化が進みましたが、神尾先生は8年も前に「少年ジャンプ+」で連載を開始されています。今お話を聞いていてもそうなのですが、神尾先生は新しいものに対して、軽やかに取り組んでいらっしゃいますよね。
そうですね。Webで描くと言ったとき、実は周りの人たちからはかなり反対されたんですよ。当時はまだ「ジャンプ+って…?」という雰囲気だったので(笑)。
——その頃はまだ立ち上がったばかりでしたよね。
はい。でも私、新しいモノが好きなんです。やったことがないことを、どんどんやってみたくなる。電化製品も、新しいモノが大好きです(笑)。
——(担当編集)デジタル作画に切り替えて、カラーを描き始めたときにも、自分で描き方を調べたとおっしゃっていましたよね。
そうですね。漫画制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT(クリップスタジオペイント)」を開発している会社の方に、アシスタント全員と一緒に教えていただきました。
——デジタルに移行されたのは、どの作品からですか?
『まつりスペシャル』(2007年~)の途中からです。当時は「CLIP STUDIO PAINT」ではなくて、Adobeの「Photoshop」で描いていました。その後「CLIP STUDIO PAINT」に移行してからも、主線だけアナログのペンで描いて、仕上げはデジタルです。そうされている漫画家さんが多いと思いますが、液晶を使って描くよりも、ペンで描くほうが断然速いんです。線も生き生きとしますし。このやり方は多分、今後も変わらないと思います。
——昨今トレンドになりつつある「縦スクロール」の漫画については、どうお考えですか?
縦スクロールの漫画は描いたことがないのですが、読者としては、読みやすいなと思っています。ただ、漫画とはまた別物のような気もしますね。フィルムを送っていくイメージというか。新しいな、と思います。
——神尾先生の思う漫画は、「コマ割りがあるもの」ということでしょうか。
コマ割りがあって、開いたときに右ページにちょっと驚きがあるとか、そういうものが漫画っぽいなと感じます。私は見開きというフォーマットもすごく好きなので。
でも縦スクロールだと、いろんな言語に対応できるのがいいですよね。英語もそうですが、左側から読む言語だと、日本の右開きフォーマットでは読みにくかったりしますから。
——たしかに、ほかの言語では混乱しそうです。昔は画像を反転させて左開きにしたものもありましたね。
変則ゴマがあったりすると、特に読み方がわからなくなる方もいると思うんです。でも縦に進んでいくのなら、どんな読者にとってもわかりやすいですよね。