2007年「ロードショー」の表の顔・裏の顔
「2007年の顔は、誰だ!?」1月号の見出しは挑発的に呼びかける。「正月映画注目50本、全部見せます!」という特集につけられたタイトルであることから、新作映画のなかから次のスターが出てくることを期待していたのだろう。
その号の表紙にオーランド・ブルームを起用しているところをみると、編集部はオーリーに賭けていたようだ。実際、彼は『キングダム・オブ・ヘブン』(2005/リドリー・スコット監督)や『エリザベスタウン』(2005/キャメロン・クロウ監督)といった人気監督の最新作に抜擢。『ロード・オブ・ザ・リング』(2001~)と『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003)の2大ヒットシリーズでバイプレイヤーとしてブレイクした次のステップに、最高の舞台をお膳立てされていた。
しかし、いずれのチャンスもみすみす逃してしまう。たとえばリドリー・スコット監督は『グラディエーター』でラッセル・クロウをトップスターに押し上げ、キャメロン・クロウ監督は『ザ・エージェント』でトム・クルーズの新たな魅力を引き出している。しかし、ふたりの名匠をもってしても、オーリーからは主演スターの輝きを引き出すことができなかった。
3月号のジョシュ・ハートネットにしても同様で、ブライアン・デ・パルマ監督のクライム・ドラマ『ブラック・ダリア』(2006)で主演を務めたものの、興行・批評ともに芳しくなかった。本人も音楽とアートが好きで内省的な性格であり、ハリウッド・スターの座にはそぐわなかったようだ。
結果的に、ジョニー・デップが4度も表紙を飾っている。つまり、2007年の顔もジョニーだったのだ。
だが、登場こそ1回だが「ロードショー」の歴史に残った俳優がひとりいる。10月号の表紙を飾った木村拓哉である。1972年の創刊以来、「ロードショー」の表紙を飾った日本人としてはフィービー・ケイツとツーショットで映った薬師丸ひろ子(1985年6月号)に続いてふたりめ、単独では初の快挙だ。
(ちなみに、アジア俳優ではノラ・ミャオ/1975年4月号、ジャッキー・チェン/1982年8月号、ハリソン・フォードとのツーショットで登場した子役時代のキー・ホイ・クァン/1984年9月号がいる。)
2007年の興行収入ランキングでは『HERO』が3位、『武士の一分』が9位であることから、日本を代表するスターであることは間違いない。
だが、いまからみれば、10月号は存在意義を失いつつある「ロードショー」を象徴していたように思う。