官僚輩出の名門、東大法学部が文系で最も簡単な学部に?

東大生だけでなく、早慶生にも避けられつつある官僚の仕事。その影響は、“官僚養成機関”として、日本の文系で最難関の地位にあった東大法学部にも顕著に表れている。
東大関係者が解説する。

「東京大学は一般的な大学のように学部ごとの募集ではなく、法学部なら文科一類、経済学部なら文科二類、文学部や教育学部なら文科三類と、科類ごとに募集が行われる。そして東大の長い歴史の中で、文系の難易度は一類、二類、三類の順で定着していた」

だが、ここ数年、異変が起きているという。

「昨年の入試の合格最低点は、550点満点中、文科一類が303点、文科二類が306点、文科三類が305点。単純にこれだけを見れば、文科一類が『最も簡単』になった。この傾向は一昨年も同じ。それ以前の年も、ここ数年、文科一類~三類まで、ほぼ点差のない状態が続いている」(前出の東大関係者)

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東大の赤門
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さらに、東大では、2年次から3年次に進級するときに、専門課程の学部を決める「進学振り分け」があるが、ここでも法学部の不人気ぶりが顕著となる事態が。

「ここ数年、法学部の定員割れが珍しくなくなっている。文科一類に入学しても、教養学部や経済学部など、他の学部を志望する学生が増えている」(同)

東大の若手卒業生が、今の東大生のトレンドをこう語る。

「最近の東大生は、官僚として徹夜で働いても、労働時間や仕事のハードさに見合った年収が得られないなら、外資系企業やコンサル企業に行った方がいい、と考える人間が多い。もちろん外資やコンサルも忙しいことは確かだが、年収も高いし、ビジネスで必要な知識やスキルは身につく。転職や起業といった選択肢も、官僚よりよっぽど広がっているように思う」

東大法学部を卒業した50代の官僚は、自身が入省したときとは隔世の感がある風潮に「優秀な東大生が、起業など、どんどん新しい選択をして社会を変えていくのは、あるべき姿かもしれない」と理解を示す一方で、未来を憂う。

「優秀な官僚は国の財産。能力のある人が官僚になってくれないと、結局、国民にとっても損失になる。人材育成は一朝一夕にはできない。政府は早急に官僚の待遇改善など、優秀な人材を確保する手立てをとらないと、人材のレベルが下がる一方で、手遅れになってしまうだろう」

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班