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レシートに記載された消費税の誤解

インボイス制度&消費増税に待った! ほとんどの国民が知らない「実は消費者は消費税を払っていない」という真実_1
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突然だが、こちらのレシートを見ていただきたい。

これは筆者がカフェで350円のコーヒーを購入した際のレシート。その350円には、消費税10%に相当する31円が含まれている。このレシートを受け取ったら誰もが「自分は350円のコーヒーを買った際に消費税31円も支払った」と考えるだろう。

しかし、それは大変な誤解である。

正確に言えば、消費者がそのように誤解するよう国家ぐるみで仕向けていると言ってもいいかもしれない。現にこのことは国が30年以上前の裁判で自ら認めているのだ。

2023年10月からスタートする予定のインボイス制度については「消費者が業者に支払った消費税の一部が、納税されずに業者の利益となってしまう(=益税)のはずるい」「これを是正するためにインボイス制度が導入される」と信じている方も少なくないようだが、これも誤りである。本記事では裁判の判例や法律の条文に則って、これらを解き明かしていく。

まず、冒頭のレシートで挙げたカフェのようなお店(課税事業者)の仕入税額控除を例に、来店客(消費者)への商品販売、国への消費税の納税を整理する。

*仕入税額控除とは、事業者が年間の消費税を計算する際に、売上時に受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引いて、本来支払うべき消費税額を申告・納税する制度。これによって生産や流通の取引を重ねる中で消費税の二重計上を防いでいる。詳細は筆者のthe Letter「前提知識ゼロでも理解できる! インボイスの仕組みと問題点」(2022年9月28日)参照


多くの国民は、さきのカフェで来店客が本体価格(319円)と消費税(31円)を支払っていると認識しているのだが、実は来店客が支払っているのはあくまでも取引価格(350円)に過ぎず、カフェは「粗利(=売上金額 - 仕入金額)に対する消費税(=10/110)を算出して納税している」というのが正確な理解と言える。