日常のもやもやを視覚化するのも娯楽の一側面
――以前のインタビューでも「価値観のぶつかりあいを描きたい」とおっしゃっていました。
そこで生じる息苦しさや生きていくことの困難さは、引き続き作品のなかの一要素として描いていけたらいいなと思っています。日常のもやっとした感じをマンガにするというのも、娯楽のひとつの在り方かなと思いますので。
――もやっとした感覚が視覚化されたり、言語化されるとつかえていたものが溶けていきますよね。また、毒が入ったものにより惹かれることもあると思います。
僕は(毒を)入れてしまうタイプですけど、それをストレスに感じる読者もいると思います。これも良し悪しだと思いますけど、僕の作風なので。
――作品の構想にあたり、いつも数年先のことを考えていらっしゃるということですが、2030年ぐらいのネット社会はこうなるだろうみたいな予想はありますか?
さすがに7年先はわからないですけど、今の感じのまま進んだら、誰もとがったことを言わなくなる社会になっていそうですね。みんなが叩き合って、そして誰もいなくなって、荒野が続いているみたいな。
それとも、自分と意見が合う人たちだけで形成された狭い集団が荒野に点在していて、集団と集団の間は全く断絶した形になっているかもしれません。今もそんな感じかもしれないですけどね。
取材・文/山脇麻生 ©筒井哲也/集英社