日常のもやもやを視覚化するのも娯楽の一側面

――以前のインタビューでも「価値観のぶつかりあいを描きたい」とおっしゃっていました。

そこで生じる息苦しさや生きていくことの困難さは、引き続き作品のなかの一要素として描いていけたらいいなと思っています。日常のもやっとした感じをマンガにするというのも、娯楽のひとつの在り方かなと思いますので。

――もやっとした感覚が視覚化されたり、言語化されるとつかえていたものが溶けていきますよね。また、毒が入ったものにより惹かれることもあると思います。

僕は(毒を)入れてしまうタイプですけど、それをストレスに感じる読者もいると思います。これも良し悪しだと思いますけど、僕の作風なので。

【漫画あり】社会の息苦しさや困難さを鋭く描く漫画家・筒井哲也が見据える10年後…。「名作とされた過去の作品が、今の価値観に照らし合わせて否定されるのは残念」_6
『予告犯』。テロリストと警視庁サイバー犯罪対策課の攻防の行方は!?
すべての画像を見る

――作品の構想にあたり、いつも数年先のことを考えていらっしゃるということですが、2030年ぐらいのネット社会はこうなるだろうみたいな予想はありますか?

さすがに7年先はわからないですけど、今の感じのまま進んだら、誰もとがったことを言わなくなる社会になっていそうですね。みんなが叩き合って、そして誰もいなくなって、荒野が続いているみたいな。

それとも、自分と意見が合う人たちだけで形成された狭い集団が荒野に点在していて、集団と集団の間は全く断絶した形になっているかもしれません。今もそんな感じかもしれないですけどね。

取材・文/山脇麻生 ©筒井哲也/集英社

『NEETING LIFE ニーティング・ライフ 上』
筒井哲也
【漫画あり】社会の息苦しさや困難さを鋭く描く漫画家・筒井哲也が見据える10年後…。「名作とされた過去の作品が、今の価値観に照らし合わせて否定されるのは残念」_8
2022年8月19日発売
680円(税込)
ISBN:-
パンデミック、クラスター、ロックダウン……。聞き慣れない単語の数々と不確かな情報が錯綜し、世界の常識は大きく変わり始めていた。そんな混乱のさなか、しがないサラリーマンである小森建太郎は、20年間働いた会社を辞め、長年思い描いてきた理想の生活スタイル「ニーティング」を始めることに。自堕落な生活とは異なる“究極の引き籠り術”で平穏な暮らしを望むが――…!?

面白いマンガがたくさん読める「となりのヤングジャンプ」
「ヤンジャン!アプリ」を今すぐダウンロード
amazon 楽天ブックス honto セブンネット 紀伊国屋書店 ヨドバシ・ドット・コム