――最後に、河野さんにとってノンフィクションで書きたい、あるいは今後書くだろうなと感じるテーマというのは、どのような題材なのでしょうか。どんな時に「ノンフィクションとしてこれを書かなければならない」と思うのか、伺えますか。
河野 これはテレビでドキュメンタリーをつくる時にも同じなんですが、どのメディアもこぞって持ち上げるような題材ではなく、誰も見ないところを見たいな、といつも思っているんですよね。
わかりやすい例で言うと、「スポーツの北海道日本ハムファイターズの○○○選手はここがすごい!」とかっていうのは、誰でもやると言いますか。そういうように皆で持ち上げたり、あるいは批判したりするテーマや対象というのが世の中にはあります。
これはいわば、「悪いヤツはこんなに悪い」「良いヤツはこんなに良い」「すごいヤツはこんなにすごい」ということを、誰が一番うまく描くか、という競争みたいなものです。
そうじゃなくて、悪いヤツにもこんなにめんこいところがあるんだとか、いとおしい部分があるとか。この人はいつも威勢の良い美しい言葉を使っているけど、こんな悪事も働いているんだとか。そんなように人がなかなか気づきづらい、描きづらいような、あえてそういった人物なりテーマなりを探していきたいなとは思っています。
――有り難うございました。
(注:めんこい/北海道方言。「かわいらしい」「愛らしい」といった意味)
文責:集英社新書編集部 写真:定久圭吾
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