愛人の「自殺」で上田死刑囚のとった不思議な行動
「毎日夜遅くまで支局で仕事をしていました。奥さんも美人で、『明日は子供の運動会なんや』と嬉しそうにしている姿など、子煩悩で真面目な印象しかなかった。ところが美由紀と付き合うようになってからは、突然支局からいなくなったり、明らかに仕事に身が入らなくなっていました」
当時、「美由紀」は「H」(仮称)という別のスナックに勤めており、Aさんはそこに通い詰めていたらしい。すでに「美由紀」には3人の子供がおり、Aさんは「金のかかる子持ち女につかまった」と周囲にこぼしていた。
死ぬ直前には「美由紀」と同棲するようになり、金策も露骨を極めた。支局内では支局長、デスクに次ぐ三席というポストにあり、年収も軽く一千万円を超えていたとみられるが「理由は聞かず、とにかくカネを貸してくれ」と同僚や他社の記者、県議や県庁職員にまで片っ端から借りまくる姿が目撃されていた。
その末のAさんの「自殺」には不可解な点がいくつもあった。特急に轢かれる際に頭から被っていた段ボールに遺書めいた走り書きがあったのだ。
<美由紀に出会えてよかった。美由紀と出会って本当の愛を知った>
一方、「美由紀」は偽装工作めいた不自然な行動をしていた。県警に捜索願いを出したその足で、鳥取支局を訪れてこんなことを言っていたのだ。
「お父ちゃん(Aさん)がいなくなった。私と喧嘩して飛び出していった」
Aさんが列車に轢かれたのは、ちょうどその時間帯だった。喧嘩した相手のことをのろけるような遺書を残して自殺するのも、いなくなった当日に捜索願いを出すのも妙に芝居がかっている。
鳥取市内で行われた通夜と葬儀でも、「美由紀」はAさんの本妻を差し置いて、喪主を務めている。前出のスナック「J」のママが言う。
「Aさんが亡くなったとき、美由紀はお腹が大きくて『一番好きな人が自殺した。喪主は本妻には渡さなかった』と言っていた。そのときの子がAさんの子だという確証はないけどね」