魂のこもったテールに正真正銘のロース、計算されつくしたヒレ
5 テール
(Hodori 用賀店)
一見シンプルな中にこだわりと研究の成果が詰まった焼肉。そんな焼肉を食べると完全にハマってしまうのだが、Hodoriの焼肉がまさにそれ。
正肉も内臓も気の遠くなるような長い時間をかけて仕入れ先との信頼関係を築き、素材を焼肉として昇華させる研究を怠らない。
今までの焼肉人生で美味しいテールを食べたことは何度もあるが、一口食べて感動したのはここHodoriしかない。テールはご存じの通り牛の尻尾だが、その根元の一番太いところを使い、普通は冷凍して骨ごとスライスしてしまうところを、生の状態で骨からお肉を外していく。最後は筋にも包丁を入れ、食べやすさにも気を遣う。
そうして完成したテールはジューシーでふっくらとしていて、濃厚な旨味が舌を包み込むように押し寄せる。手間暇を惜しまず、包丁に魂を込めたテールを食べてみて欲しい。
6 ロース
(安兵衛)
焼肉という食文化が生活に溶け込む街、大阪。東京の焼肉が味付けや仕込みよりも素材の肉質に力を入れた焼肉店が多いのに対して、大阪の焼肉はその逆パターンが多い。そんな大阪焼肉界にあって、安兵衛は圧倒的な肉質にこだわっている。
店主自ら食肉市場や気になる生産者の元を訪れ、肉だけでなく牛への情熱も熱い。それでいて、タレなどの味付けや仕込みの丁寧さも備わっているのだから、もはや驚きしかない。
ロースを頼むと本物のロースが出てくる。普通の焼肉店では部位に関係なく、サシの少ない部位をロースで提供し、サシの多い部位をカルビで提供することが多いが、安兵衛のロースはサーロインやリブロースといった正真正銘のロースを出してくれる。しかも値段は1皿千円台だ(2022年現在)。
食べた瞬間に口の中で溶けだすようなロースではなく、滑らかな舌触りでありながら味わい深いロース。これこそが本物のロースだろう。
7 ヒレ
(焼肉ジャンボはなれ)
かつてはカルビやロースといったメニューが一般的だった焼肉に、希少部位という概念を持ち込み、そうした部位ごとの特徴がでるようにミリ単位で厚さを調整するのがジャンボだ。
さらに一度食べたら中毒になるほど美味しいタレ。20年ほど前に初めてザブトンやミスジを食べた時には、あまりの美味しさに一瞬で心奪われたものだ。
20年通い続けたからこそ、毎回美味しいと感じながらも感動できるほどのメニューにはなかなか出会えないのが普通だと思うが、2022年に食べたヒレは凄かった。熟練の料理人が丁寧にカットしたことが伝わる断面。薄すぎず、厚すぎず、焼き網やタレとの相性まで計算し尽くされた絶妙な厚み。
お肉にストレスを与えないようにこまめに返しながら焼き上げれば、唇でそっと挟むだけで千切れる繊細な食感に出会い、奥歯で噛めば東京ベスト3に入る至高のタレとお肉の旨味が絡み合う。
後編では、心が震えるほどのハラミやカルビ、サガリについて紹介する。
画像・文/小池克臣
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