牛肉のおいしさをもっとも引き立ててくれる食べ方とは……

日本人はピュアなものに高い価値を感じる。

お肉が上質であればあるほど、焼かずに生で食べることを良しとしたり、味付けはタレではなく塩だけを良しとしたりしがちだ。
しかし、この際だからはっきり言っておこう。
生肉は確かに美味しいが、火を入れることでお肉は化ける。より香りが際立ち、お肉本来の旨味がより深みを増すのだ。だからこそ焼肉がこれほど人気を得ているのだろう。

また、塩で食べるのであれば分厚いステーキが一番だ。塩は食べ疲れしやすいので、色々な部位を塩で食べても違いが分かりにくかったりする。
そして、年間250食以上焼肉を食べ続けてきて分かったのは、焼肉を突き詰めるとタレに行き着くということだ。良店と呼べないような焼肉店のタレは、お肉の味を消し去るような破壊力がある場合が多い。一方、名店のタレはお肉の味を消すどころか、むしろお肉の味を引き立ててくれる。

では、肉バカが一番好きな焼肉のタレはどこか!?
それは東京・浜松町にある「焼肉くにもと」だ。
くにもとの焼肉にはSNS映えを狙うような派手さはない。ウニやトリュフも出てこない。あくまで王道の焼肉を突き詰めている。

焼肉猛者たちが最後に辿り着く美味しすぎる焼肉。「くにもと」の味よ、永遠なれ_a
浜松町駅近くにひっそりとたたずむ、くにもと本店

焼肉におけるモミダレとツケダレの役割

一般的な焼肉店のタレは2種類ある。焼く前のお肉をもみ込むモミダレと、焼き上がったお肉をつけるツケダレがそれだ。
お肉が運ばれてくるまでに、ツケダレを舐めてみると面白いことがわかる。酸味があって、特別おいしく感じないのだ。しかし、焼いたお肉をツケダレにつけて食べたあとに味わってみるとその印象はガラッと変わり、信じられないほど美味しくなっている。
つまり、名店の焼肉は熱されたモミダレと肉汁がツケダレに加わることで、初めて味が完成するように作られているということだ。

和牛の特徴であるサシに由来する甘みを、ツケダレの酸味がまろやかに包み込んでくれるのだ。そして、くにもとはこのツケダレが素晴らしい。ここまで計算し尽くされたタレにいつも感動を覚える。

焼肉猛者たちが最後に辿り着く美味しすぎる焼肉。「くにもと」の味よ、永遠なれ_b
くにもとで供される肉には手書きの部位名が添えられている

ちなみにくにもとの最高峰のタレには最高峰のお肉が必要だ。お肉のポテンシャルを引き上げるタレだからこそ、ポテンシャルの低いお肉では、その本領が発揮されない。極上のお肉だからこそ、お肉もタレもどちらも活きるのだ。