きっかけとなったビデオメッセージ、そして、コロナ
「コロナさえなかったらな」と、伯父はぽつりとつぶやいた。
「他のいろんなこと片付けたら『次は徹也や』言うてたら、コロナで徹也に会えなくなってしまったんです」
山上容疑者は、コロナ渦の中、孤立をさらに深めていく。そして2020年当時、山上容疑者は、派遣会社に登録し、工場で勤務する中で、あの動画を発見してしまったのだ――。
旧統一教会の始祖である文鮮明氏と妻が設立した関連団体「天宙平和連合」(UPF)に寄せられた安倍晋三元首相のビデオメッセージである。
〈UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします〉
安倍元首相が褒め称える相手は、紛れもない山上容疑者の“家庭”を崩壊させた敵(カタキ)だったのである。
そして、2022年7月8日、11時31分、あの事件は起こってしまった…。
「山上容疑者に会いにいかないのか?」と、尋ねると伯父は首を振った。
「(面会に行った徹也の)妹から、徹也が私に詫びているという話を聞いたんですよ。そんな、徹也に会ったらかわいそうですやん。だから、会いに行きません。今後の裁判の証人出廷もするつもりはありません。すべて、もう、事件直後に検事に話してますので」
そして、伯父は、こう、山上容疑者のことを回顧する。
「徹也は優しいんですわ。優しいから、妹のことも守ってね。それは、全部、徹也が統一教会のことは一身に受けて、妹を守っていたから。そういうとこ、弟(徹也の父親)に似てるんですわ。どっかの記事に、弟がアルコールやってA子にDVしたってありましたけど、そんなことありません。事件直後、検事が来て、A子に、弟がどういう人やったか聞いたんですよ。そしたら、A子がちょっと上を見ながら、『優しい人やった』って言うたんですよ。弟も優しすぎてね。徹也も一緒ですわ」