村本さんは、「その気になればモールス信号でも観客とつながれる」と話す。ときに言いたいことを口に出せない日本社会の同調圧力を知る人なら、その自由な姿に心動かされずにはいられないはずだ。日向監督は言う。
「村本さんは、社会の基準ではなく、自分で自分の価値を決めようとしています。39歳での渡米なんて普通なら不安ですが、彼は新しい大きな夢にワクワクしていました。同じクリエーターとして、そこに大きな魅力を感じたし、自分も村本さんのようにありたいと感じています」
小さな枠に収まっていれば、安定を手に入れられると思われがちだが、実はその枠からはみ出せないという不安に苛まれるものだ。枠からの脱出は、リスキーで骨が折れるかもしれないが、テレビを捨てて新たな居場所を確立しようとする村本さんの姿には、私たちの抱える生きづらさを吹き飛ばす痛快さがある。
英作家のジョージ・オーウェルは「すべての冗談は小さな革命だ」という言葉を残したそうだが、村本さんの生きざまはそれを体現していると言える。この小さな革命が封じられたとき、個人、そして国家はどんな運命をたどるのだろう。
たとえばロシアは、スターリンの死を題材にしたコメディ映画『スターリンの葬送狂騒曲』の上映や、プーチンを茶化したイラストの使用を法律で禁じた。笑いの自由を奪われた国が進む先を、注視せずにはいられない。
取材・文/増保千尋
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