国際映画祭が狙う次の日本人監督は?
菅田将暉&原田美枝子主演の映画『百花』(2022)で長編に初挑戦した川村元気監督が、第70回サンセバスチャン国際映画祭でシルバー・シェル賞(最優秀監督賞)を受賞した。同賞を日本人が受賞するのは初めて。本映画祭は新人発掘に定評があり、『ドライブ・マイ・カー』(2021)でアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督が、初めて参加した国際映画祭でもある。
『ドライブ・マイ・カー』は国際映画批評家連盟賞の年間グランプリを受賞し、サンセバスチャン国際映画祭のオープニングで授賞式が行われた。濱口監督をいち早く紹介して注目を浴びたのがニュー・ディレクターズ部門。韓国のポン・ジュノ監督に国際映画祭で初めて賞を与えたことでも知られ、濱口監督は第56回に『PASSION』(2008)で参加している。
今年、同部門に日本から選ばれたのは、『宮松と山下』(2022/11月18日公開)の関友太郎・平瀬謙太朗・佐藤雅彦監督と、『なぎさ』(2017)の古川原壮志監督で、長編に初めて挑戦した面々だ。選考委員のロベルト・クエトは「創造力に富んだ2作」と、チョイスに自信を見せた。
『宮松と山下』はエキストラ俳優・宮松(香川照之)の、自身も知らなかった過去が明らかになっていく人間ドラマ。一方『なぎさ』は、心霊スポットだと友人に連れて行かれた先が、偶然にも主人公の妹が事故死したトンネルだったことで、過去へと誘われていく心の旅。
両作ともテイストは違えど、過去と現在、虚構と幻想を並列に描きながら、主人公の過去と内面を掘り下げていく構成。観客は、一体何の映像を見せられているのか?と戸惑いながらも、物語の深みに没入させられる新鮮な映像体験を味わうことになる。