加藤の本懐「勝たせてあげたかった」
失意のなか新幹線で帰路に就き、秋田駅に到着すると、加藤から諭すように言われた。
「お前たちはここで終わりじゃないよ。次のステージがあるんだから、東京体育館に戻って大会を見届けるべきだと思う」
堀たち主要メンバーは急遽、夜行バスに乗って東京へ戻ることとなった。
「最悪だよ……こんな仕打ちはねぇ!」
早朝。体育館の開場までファミレスで時間をつぶしていた堀たちは、盛大に愚痴った。
東京体育館に入ると、全員で観客席最上段の片隅に陣取り、素性を隠すようにベンチコートを着込んで大きな体を丸めた。自分たちが「能代工の選手だ」と、周囲にバレることへの気まずさがあったからだ。
選手たちを促した加藤の深謀はこうだった。
「『敗戦から学ぶ』じゃないけど、モチベーションに変えられると思っていたんです。自分たちと同じバスケで戦っている高校生へのリスペクトを感じてほしかったんです」
そして加藤は、まるで自分を責めるように、ボソッと呟いた。
「なかなかね、毎年勝つっていうのは難しいです。でも、勝たせてあげたかった、本当に」
卒業を前に下宿の主人がかけた言葉
卒業を間近に控えた3月。堀たちはそんな加藤の親心を、少しだけ感じることができた。
下宿の主人と“最後の晩餐”をしていると、彼からこんな惜別の言葉を贈られた。
「みんな辛い思いをしたけどさ、『若い時の苦労は買ってでもしろ』って本当だよ。負けた苦労がいつか、自分にとって大切なものになるんだって信じて、卒業してくれや」
溜まりに溜まっていた負の感情が、洗い流されるようだった。
嗚咽や鼻をすする悲しい音が、場を包む。
無冠の男たちは、体を揺らし、顔を歪ませ、大粒の涙を流していた。
取材・文/田口元義
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