レコードデビューまで道のり

のちに「キッス」を結成することになるポール・スタンレーとジーン・シモンズ。2人はもともと「ウィキッド・レスター」というバンドのメンバーだった。

1970年に結成されたウィキッド・レスターは、翌年にデモテープを聴いたエピック・レコードからアルバムを発売しようと持ち掛けられ、1年近くをレコーディングに費やしてアルバムを完成させた。

「キッス」結成前は「ウィキッド・レスター」というバンドにいたポール・スタンレーとジーン・シモンズ(写真/Shutterstock)
「キッス」結成前は「ウィキッド・レスター」というバンドにいたポール・スタンレーとジーン・シモンズ(写真/Shutterstock)
すべての画像を見る

ところが、ようやく完成したアルバムに対するエピックの反応は非常に渋く、アルバムを出すという話はなかったことにされてしまう。

結成から2年余り。その活動内容はたった2回のライヴと、お蔵入りになってしまったアルバム制作のみだった。ほとんど人前で歌っていないからファンもいないし、先の見えない状況に痺れを切らしてメンバーも抜けていった。

ポールとジーンは、自分たちのバンドに必要なのは印象的なイメージと、明確な音楽の方向性だと分析。新たなメンバーを探して再スタートを図る。

1973年1月、リード・ギターのエース・フレイリーとドラムのピーター・クリスを加えた彼らは、バンド名を「キッス」に改めた。

2023年に結成50周年を迎えたキッス(写真/Shutterstock)
2023年に結成50周年を迎えたキッス(写真/Shutterstock)

デヴィッド・ボウイやT・レックスを筆頭に、派手な化粧や衣装が印象的なグラムロックが全盛だったこの時代。彼らも白塗りや様々な衣装を試しながら、自分たちに合ったイメージを模索していく。

そして、自分たちに女性のようなメイクは似合わないという結論に至った彼らは、お馴染みのキッス・メイクに辿り着くのだった。

初ライヴでは、たったの3人しか観客がいなかったという彼らのステージも、奇抜な格好や派手なパフォーマンス、そして実力に裏打ちされたパワフルな演奏により、次第に高い評価を集めていった。

こうしてキッスは1年足らずで新興レーベルのカサブランカ・レコードと契約を交わし、翌年2月には1stアルバム『地獄からの使者~キッス・ファースト (原題/KISS)』をリリースする。「ウィキッド・レスター」時代に苦汁をなめたポールとジーンの2人にとっては、念願のレコード・デビューとなった。

特徴的なメイクアップを封印し、素顔で活動していた時期もあるキッス。写真は『クレイジー・ナイト[紙ジャケ] [初回生産限定盤] [SHM-CD]』(2008年6月25日発売、UNIVERSAL MUSIC JAPAN)のジャケット
特徴的なメイクアップを封印し、素顔で活動していた時期もあるキッス。写真は『クレイジー・ナイト[紙ジャケ] [初回生産限定盤] [SHM-CD]』(2008年6月25日発売、UNIVERSAL MUSIC JAPAN)のジャケット