「メンズノンノ」モデル時代から変わっていない

「他にお金を稼ぐ術がないから」東出昌大が耳目を集める “俳優”を手放さない理由_3
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──ずっとお芝居を続けたいと思いますか?

わからんです。というのは、人生は何が起こるか、本当にわからないから。あまり先のことを期待しないし、設計もしない。ちょっと今は、川の流れに身を任せる数年間になるんじゃないかなと思います。

──ここ数年で東出さんを取り巻く環境は大きく変わったと思います。それでも、注目を集める俳優というお仕事を手放さなかったのはなぜでしょう?

他にお金を稼ぐ術がないから。うん、そうですね。「芸能界引退か?」とか言われることもあったけど、芸能界っていう世界に、いつ入ったかもわからんのです。

高校生のときにモデルになったけど、白黒ページばかり出ていたあのころが芸能界デビューだったのか。映画に初めて出演した『桐島、部活やめるってよ』(2012)の公開日が芸能界デビューなのか。

仕事がこなくなったら自然と消滅する世界だし、引退宣言をするつもりもない。それだけですかね。

──「メンズノンノ」モデル時代のことは、覚えていますか?

思い出しますよ。専属モデルになったとき、当時の編集長から「とにかく大学は行きなさい。芸能界で成功するなんて、天文学的数字なんだから」って言われたことを覚えています。

「天文学的数字」という語感の重厚さに、高校生の僕はあわあわしました(笑)。

でも、そのころから僕は多分、あまり変わっていない。ずっとどこか抜けているし、夢中になると突っ走ってしまうから。

──今、夢中なものとは?

やっぱりお芝居になるのかな。次に撮影する作品に関しても、「どうやったら面白い芝居ができるだろう?」と考える時間は没頭できますから。

楽しいかって言われると……少し違いますけどね(笑)。


取材・文/松山梢 撮影/nae. スタイリスト/檜垣健太郎 (tsujimanagement)

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東出昌大
1988年埼玉県出身。2012年に『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューし、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞等受賞。主な出演映画は、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品『寝ても覚めても』(2018)、『コンフィデンスマンJP』シリーズ(2019~2022)第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作『スパイの妻』(2020)『Blue』(2021)『草の響き』(2021)『天上の花』(2022)など。片嶋一貴監督)、2023年3月公開『Winny』(2023)、2023年公開『福田村事件(仮)』(2023)など。

とべない風船』(2022)上映時間:1時間40分/日本

「他にお金を稼ぐ術がないから」東出昌大が耳目を集める “俳優”を手放さない理由_4

陽光あふれる瀬戸内海の小さな島。数年前の豪雨災害で妻子を失って以来、自ら孤立している漁師の憲二(東出昌大)は、疎遠の父(小林薫)に会うために来島した凛子(三浦透子)に出会う。凛子もまた、夢だった教師の仕事で挫折を味わい、進むべき道を見失っていた。凛子は島の生活に心身を癒されていくが、憲二の過去を知って胸を痛める。最初は互いに心を閉ざしていた2人は、あたたかくてお節介な島の人々に見守られ、少しずつ打ち解けていく……。

2022年12月1日(木)広島先行公開
2023年1月6日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
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公式サイト:https://tobenaifusen.com